Kindleなどの表示方式として知られるようになったE-Inkだが、これは静止画や文字を表示するには非常に省エネ効果が高い表示方法だ。
そのため、一度充電したら長時間使えるため、電子書籍リーダーとして普及した。しかし、同じ静止画や文字の表示であれば、標識にも使えるのではないか、ということに気付いた人が居た。
それはアイディアだ。そこで、オーストラリアのシドニー市では、世界で初めてE-Inkを交通標識に採用し始めた。
実は道路交通標識に適したE-Ink
シドニー市で運用が始まったE-Inkによる道路交通標識は、スロベニアのVisionect社が開発した。E-Inkの最大の特徴は、表示内容が変化しない状態であれば、長時間の表示に際しても殆ど電力を必要としない、ということだ。
そのため電子書籍のように、ページをめくる以外は表示を変えないデバイスとして採用されている。
ならば、道路交通標識も、一度設置したらめったに表示内容を変えることがないが、全く変えないわけでもない、といった性質のものなので、E-Ink活かせるではないか、ということになった。
しかもVisionect社が開発した標識は、3G回線を使って遠隔操作で表示内容を変えることができる。つまり、一度設置しても、交通状況に合わせて表示内容を変更できるし、決まった時間だけ必要な工事などにも合わせて表示を変更できる。
あるいは今回設置された場所では、スポーツイベントに合わせて路上駐車を禁止する時間帯を表示させるといった運営ができた。
なお、表示を変更する際に使われる僅かな電力は、標識の裏側に設置したソーラーパネルによる発電で補われているため、外部から電気を供給する必要が無い。
省エネタイプのE-Inkの標識は世界に広まるかも
もう一つE-Inkの特徴だが、通常の液晶表示と異なり、太陽光によって見づらくなるといったことがない。
しかし、自ら発光しないため、夜間はライトで照らす必要がある。その場合の電力も、ソーラーパネルで昼間の内に発電して蓄電した電気を利用している。
このシドニー市でのE-Ink標識の試みは、世界中から注目されるに違いない。省エネで柔軟な運用ができる道路交通標識は、もっと多くの場所で採用されるようになるだろう。
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【参考・画像】
※ Sydney adopts ‘world’s first’ e-ink parking signs ? The Register