タフツ大学(Tufts University)の生物医学技術者は、酵素や抗生物質、抗体、ナノ粒子、そして成長因子などを、インクジェットプリンタによって印刷できる技術を発表した。
それは、シルクインクを使う方法で、治療や再生医療、そしてバイオセンサーに活用できることが期待されるという。
シルクインクという可能性

インクジェットプリントは、現在利用可能な印刷技術の中でも、最も利用しやすい印刷技術であるため、生体分子を印刷する方法としては以前から科学者の間で注目されていたのだ。しかし、インクジェットプリンタが印字する際の熱で、化合物の安定性が失われてしまい、その効能も失われてしまうという課題があった。
そこで絹タンパク質を利用することで、これらの化合物を安定化させる手法を考案したのだ。つまり、絹タンパク質は、酵素や抗体、成長因子などを安定させる「繭」になるという。インクジェットプリンタで様々な化合物を印刷する手法が確立すれば、インクに様々な働きを期待することができる。
そこで研究チームは、同じ手法で様々なシルクインクのカスタム・ライブラリーを作成してテストして見た。
例えば手術用手袋に、細菌を検知するポリジアセチレンを印刷し、もし大腸菌に曝されたら「汚染された」という文字が青色から赤色に変化するようにしてみた。
次にプラスチックの皿の上に骨成長を促すタンパク質を印刷した。
また、細菌培養物にナトリウム・アンピシリンを印刷して抗生物質の有効性を検査した。
さらに、金のナノ粒子を紙に印刷し、フォトニクスや生物学でのカラーエンジニアリングやバイオイメージングの表面プラズモン共鳴への応用を試した。そして、小さな機能的生体分子を運ぶことをテストするために酵素を紙に印刷してみたりしている。
これらの試みから、研究者たちはシルクインクの可能性に期待している。
インクジェットプリントの可能性
たとえばそれは、特定の病原菌などに反応してメッセージを表示するバイオ検知手袋であったり、傷に合わせた抗生物質が印刷されたスマート包帯であったりするのだ。
また、今回は一つのインクカートリッジでの研究となったが、研究者達は、複雑な機能を組み合わせたマルチカートリッジ印刷への拡張もできると考えている。
3Dプリンターが何かと話題になっている昨今だが、インクジェットプリンターならではの新たな試みも行われているのだ。
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【参考・画像】
※ Yellowj / PIXTA(ピクスタ)