これこそ、テクノロジーで簡単に乗り越えられる「壁」なのではないか? 韓国の研究者・エンジニアのグループが、点字を表示できるスマートウォッチを発表した。今年中には先行予約を開始するという。
ドットが浮き上がる腕時計

『dot』と名づけられたこのスマートウォッチ、表面には通常の文字や数字の表示部はない。あるのは、出たり引っ込んだりするドット、つまり点字だ。点字を、同時に4文字分表示できる電子点字リーダーなのである。
世界には、2億8,500万人ほど重度の視覚障害者がいる。そのうち95%は読むことができないという。世の中の書籍のうち、点字に翻訳されているものは1%にすぎない。一方で、電子書籍等を点字で表示することができる電子点字リーダーの価格は2,000ドル(約24万8000円)以上にもなる。そのため、重度の視覚障害者のほとんどが文字を読むことができずにいるのだ。
この『dot』は、その問題を大きく改善する安価な電子点字リーダーなのだ。目標としている価格は300ドル未満(3万7,200円)。スマートウォッチなので、時計機能はもちろん、アラーム機能、通知機能、ナビゲーション機能、そしてブルートゥース4.0の機能を持つ。
そしてもっとも大きな特徴は、場所も時間も選ばず、メッセージやツイート、書籍などの文字データを点字にして表示することができることだ。このデバイスが普及すれば、より多くの視覚障害者が文字データを読むことができるようになるはずだ。
日本語では難しいか?
現在のテクノロジーを使えば、それほど使用するのに難しいデバイスではないだろう。健常者にはなかなか気づきにくいけれど、ハンディキャップをカバーするこういったデバイスこそ、最新のテクノロジーの真骨頂といえるのではないだろうか。
ただ、このように書いてきたものの、残念な事実もある。このスマートウォッチはすんなり日本語に通用しない。点字というのは表音文字なのだ。そして日本語は漢字という表意文字を多用する。
実は、世界的には表音文字を使う言語が圧倒的に多い。アルファベットを使うすべてのヨーロッパ系言語もアラビア語も、ハングルもそうだ。これらは機械的に点字に翻訳できる。しかし、日本語の場合、漢字が混ざると点字への機械的な翻訳は極端に困難になる。
もちろん、簡単な通知やアラーム等は点字の表示が有効活用できるかもしれない。知人からなら、ひらがなのみでメッセージを送ってもらえば、(相手が点字を知らなくても)それを読むことができるだろう。しかし、漢字とひらがなが混じった、一般的な日本語の文章を点字に翻訳できるかといえば簡単ではないだろう。その前に、そうとう高性能な日本語の文字認識アルゴリズムが必要になるはずだ。
とはいえ、まずは表音文字の国で普及してもらえばいい。日本語でも活用できる時代はきっとくるはず。今すぐじゃなくても、そう遠くない未来に。
【参考・画像】
※ dot – fingerson.strikingly.com
※ ‘dot’ braille smart watch – YouTube
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