
NASAが電力で飛行する航空機のアイディアコンテストを開催し、米国の大学から20のアイディアが提出された。
そのうちの5つは、審査員達を唸らせるようなアイディアだったという。
これらのアイディアは、実際に2020年に事業化され、既存のエンジン飛行機と競合するようになるかもしれない。
選ばれた5つの電力航空機のアイディア
コンテストには条件があった。飛行機は4人乗りで、荷物は400ポンドまで載せられること、そして1回の飛行で575マイル飛行でき、少なくとも時速150マイルで飛行し、3,000フィート未満の滑走で離陸できなければならない、という条件だ。
また、学生達は自分たちがデザインした航空機が飛行するために必要な空港のインフラに、いくら掛かるかというコスト計算も要請されていた。それではどのようなアイディアが選ばれたのだろうか。
まず、Graduate Levelとして、『Vapor』という作品が選ばれた。考案者はジョージア工科大学航空宇宙システムデザイン研究所の大学院生のTom Neumanさんだった。

彼のデザインは2.5メートルの尾翼が2枚付いており、そこにプロペラが付いているという独特なものだ。空気抵抗を低減するための機体設計がされており、航空ベンチマークとして標準とされるCirrus SR22航空機よりも25%削減できている。
固体高分子形燃料電池(PEMFC)によって約150ノット(時速278キロ)で飛行し、800海里(1482キロ)飛行できるという。他の4案はUndergraduate Levelとして選ばれた。
このレベルの1位は『Bladessa』というカルフォルニア大学デーヴィス校の学生チームによる案だ。

主翼に2つのプロペラが取り付けられた一般的な形状である。充電式リチウムイオン電池が使われる。
135ノット(時速250キロ)で飛行でき、520海里(963キロ)飛行できると予想している。
272馬力(200キロワット)の力で、可搬重量700ポンド(317キロ)を含めて4200ポンド(1900キロ)の最大離陸重量を持てると予想している。
2位の『Areion』もカリフォルニア大学デービス校のチームで、独特な形状となっている補助翼によって主翼の面積と空気抵抗を減少している。

この形状は自然層流(NLF)技術から導かれたもので、飛行の為のエネルギーを節約できるようだ。動力源は水素駆動燃料電池としている。
3位の『BeamTree PH-10』はバージニア工科大学のチームによる案だ。

48.5フィート(14.7メートル)の主翼を持ち、AC誘導モーターと3つのリチウムイオン電池パックによって、175ノット(時速325キロ)で783海里(1450キロ)飛行できるとしている。
電気推進システムの質量の大きさを補うために、翼を小さめにし、胴体をオタマジャクシのような独特の形状にして空気抵抗を小さくしている。
最後の『SCUBA Stingray』もこれまたカリフォルニア大学デービス校のチームだ。

可搬重量と航続距離を大きくするために、最先端の空気アルミニウム電池とリチウムイオン電池のハイブリッドシステムを採用するという。
最高速度は130ノット(時速240キロ)を超え、少なくとも500海里(926キロ)を飛行し、400ポンド(180キロ)の可搬重量はクリアできるとしている。
航空機のエネルギーと空港の騒音を考える機会に
以上、簡単に選ばれた案を見てきたが、NASAはこのコンテストを単なる学術的な研究課題としているのではなく、実際に航空産業の化石燃料依存度を下げ、空港の騒音問題への対策を練る場としているという。
なお、受賞者たちはそれぞれの案をプレゼンテーションする機会を与えられるために、10月にNASAを訪問するように招待されている。
若者達のアイディアが、将来の航空産業のエネルギーや空港環境を見直す原動力となるかもしれない。
【参考・画像】
※ Students Electrify NASA with Future Airplane Designs | NASA
※ Students rise to NASA electric aircraft design challenge
【関連記事】
※ 絶対驚く!世界が賞賛した飛行機デザインは「既存の考え」に挑戦