自動ブレーキ技術などプリクラッシュセーフティが話題となっている昨今だが、自動車自体の衝突安全性も時代とともにより基準が厳しくなり、向上している。
スモールオフセット衝突試験とは
衝突試験の歴史をひもとくと、単純に壁に激突させる試験をフルラップ衝突試験にはじまる。これは車の車体前部の全体で壁にぶつかるため、前部全体で衝撃を吸収させてキャビンを守る構造とした。
しかし、実際の事故で壁にまっすぐ直進してぶつかるケースは少ない。対向車線からはみでたクルマとの正面衝突が多く、これが重大な負傷となるということで導入されたのがオフセット衝突試験だ。
これは50:50、ちょうど車体半分でぶつかる衝突試験で、片側のフレームにほとんどの衝撃が加わるためにより対策は大変だったが、各メーカーの努力でクリアしてきている。
ところが、この安全ボディでも重大事故が発生している。実際の事故をより詳細に調べた結果、衝突寸前に多くのドライバーはとっさにハンドル操作をしてぶつからないようにしているため、50:50ではなく75:25程度の少ないオーバーラップで衝突していることが分かった。これに対応する試験が昨今導入されたスモールオフセット衝突試験だ。
スモールオフセット衝突試験が導入された当初、既存の自動車の多くが思うような性能を発揮できず、キャビンは醜く変形し、ダミー人形は痛々しい傷を負っている。
新型フォードF-150がGOOD評価へ
スモールオフセット衝突の対応が難しいのは、ほとんどすべての衝撃を片側のフレームで吸収しなければならない点だ。またキャビンの変形を抑えるためにキャビンそのものを強固にする必要がある。
大きい車はその大きさゆえに安全と思われがちだが、その重い車体により逆に対応が難しい面がある。というのも車体後部の重量が慣性力となってキャビンを「押し潰す」からだ。
つまり前からの衝撃だけではなく、後ろから押す力も配慮しなければならない。
全米で人気のピックアップトラック、新型フォード『F-150』ではアルミボディを採用、ボディを軽量化することでスモールオフセット衝突試験では最高評価となるGOODを得ることに成功した。
プリクラッシュセーフティとクラッシュセーフティ、両輪そろってこその安全性である。また技術を過信することなく、安全運転に努めたいものだ。
【参考・画像】
※ Ford F-150 crew cab earns IIHS Top Safety Pick
※ First IIHS test of aluminum-body F-150 – IIHS News – YouTube
※ 2015 Ford F-150 crew cab small overlap IIHS crash test – YouTube
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