現代の機械製品に使われるアクチュエータは、電磁モーターのように金属などを使ったハードなものがほとんどだ。しかし、バイオメディカル材料、人工筋肉を実現するためには、ソフトで、軽く、ウェットな性質を持つアクチュエータがのぞましい。
そんなアクチュエータの実現のために、大きな進歩となるヒドロゲル(ゼリー状物質)の開発を理化学研究所(理研)が発表した。
外界と水の授受を行わないヒドロゲル
従来から、バイオメディカル材料、人工筋肉の実現のために、ヒドロゲルが注目されていた。ヒドロゲルとは、三次元のナノ網目構造を水で膨潤させたゼリー状物質のことだ。
これまでも温度などの外部刺激に応答し、収縮・膨潤するヒドロゲルを使ったアクチュエータは実現していた。しかし、それは外界との水の授受を伴う体積変化を動力源としているため、動作速度が遅く、動きに方向性もなかった。また水中での利用に限られていたし、運動を繰り返すと劣化が速いという欠点もあったという。
しかし、今回理研とNIMS(物質・材料研究機構)の共同研究グループが発表したのは、互いに静電反発する無機ナノシートを平行に配光させて、これらを刺激応答性のポリマーでできたヒドロゲルの中に埋め込むことで、従来とはまったく異なる原理で作動する“ヒドロゲルアクチュエータ”だ。

このヒドロゲルアクチュエータに使われているのは、温度応答性ポリマーである、N-イソプロピルアクリルアミドだ。このポリマーは32度以上で脱水和し、低温では水和する。このポリマーでできた網目の中に、磁場により配向した無機ナノシートを埋め込んで、ヒドロゲルアクチュエータを合成したという。
このヒドロゲルアクチュエータを50度に加熱すると、ポリマーが脱水和して水分子の運動が増すために、ヒドロゲル内部の誘電率が高くなり、ナノシート間の静電反発力は増大して、ヒドロゲルは1秒以内に1.7倍伸長する。
逆にヒドロゲルを15度に冷却すると、ポリマーは水和して水分子の運動が抑えられるためにヒドロゲル内部の誘電率は低くなり、ナノシート間の静電反発力は減少。ポリマーは1秒以内に元の長さに収縮するという。またこの伸縮は劣化をともなうことなく何度でも繰り返せる。
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