自動車にとって、とても重要なのは“タイヤ”である。というのもすべての走る、曲がる、止まるはタイヤで行っているからだ。
ところがこのタイヤが地面をどうなぞっているのか、我々は無関心になりがちだ。実は、このタイヤを働かせるための重要なパーツが“サスペンション”である。
今回は、このサスペンションを振り返ってみたい。
サスペンションとは「懸架装置」
サスペンションとは日本語でいえば懸架装置、何を吊り下げて支えているかといえば、もちろんタイヤを吊り下げ、ボディを支えている。そのためサスペンションはボディの揺れ、ハンドリングや乗り心地、さらには騒音に大きく影響する。
サスペンションの種類は大きく分けると車軸式、独立式とある。
種類1:車軸式
車軸式は、左右のタイヤがまっすぐつながっているシンプルな構造のものだ。シンプルなために耐久性が高く、コストも安い。一方で左右で独立していないために、乗り心地面は不利になりやすい。
種類2:独立式
独立式は、左右のタイヤがそれぞれ独立して動くため、タイヤが路面に追従しやすく、乗り心地面や操縦安定性にも優れている。構造はシンプルなストラット式や、ジオメトリー変化が少ないダブルウィッシュボーン式、マルチリンク式などがある。構造が車軸式と比較し複雑なことや、セッティングの幅が広いことからコストは高い。
ダブルウィッシュボーン式とマルチリンク式は、リンクとジョイントの数や実装方法が異なるが、構造と作動は類似している。
まずは諸元表をチェック
最近の自動車は、内部構造について解説している例は少ない。しかし、サスペンション形式は必ず諸元表に記載されており、これをチェックすればその自動車がもつ運動性能や乗り心地がだいたい推測できる。
フロント・ストラット式、リア・トーションビーム(車軸)式

多くのFF、軽自動車、小型車が採用するのがこの組み合わせである。可も不可もなく、標準的な形式といっていいだろう。
(例:主要装備/主要諸元表|COPEN|Brand&Fan Community : https://copen.jp/product/spec)
フロント・ストラット式、リア・マルチリンク式
走りと乗り心地の両立を計った欧州車の『FF』や、後輪駆動車、ポルシェ『911』といったスポーツカーの多くが採用するのがこの組み合わせ。リア・マルチリンク式は独立式のために段差を越えた時のショックが逆側に伝わらないことが乗り心地面で高級感を演出し、もちろんハンドリングのポテンシャルも高くなる。
後輪駆動車ではリアタイヤのトラクションを路面に伝えるため、必須といってもいい方式だ。
4輪独立式
前後ともにダブルウィッシュボーンまたはマルチリンク式とした組み合わせで、1990年代のホンダFF車や後輪駆動オープンスポーツカーのホンダ・S2000、マツダ・ロードスターなどFR車で多く採用されている。

(マツダ・ロードスター http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/feature/driving/)
フロントがダブルウィッシュボーン(マルチリンク)式の場合、転舵し車体が傾いた場合でも路面に対してタイヤがきちんと接地するため、ハンドリング面のメリットが大きい。
適材適所
構造が複雑なマルチリンク式が最も優れたサスペンション形式と思われがちだが、実際には用途に合わせて組み合わされる。例えば、4輪駆動車で前後とも車軸式を採用してことがあるが、これは道なき道を行くオフロードで使用する時、強靭さとトラクションが必要なためだ。
4輪操舵技術(4WS)
通常ハンドルはフロントタイヤを操舵するが、電子制御でリアタイヤを操舵する4WSがある。後輪を逆位相、つまりフロントタイヤと逆に転舵すると小回りが効き、逆に同相、同じ方向に転舵するとコーナリング性能が高まることから、走行条件に応じて自動的に後輪を操舵するものだ。実装方法はメーカーによって様々だが、基本的にはリアタイヤの向きを決めるリンクの根元にモーターを装着し、位置をずらすことで転舵させる。
1980~90年代、日本メーカーで盛んに開発、採用された4WSではあったが、ドライバーの感性に合わない、コストがアップすることから下火となった。しかし最新のポルシェ『911』で初採用されるなど、未だ根強い技術だ。
また、さらに安定性を高めるために前輪にも同じような仕組みを入れ、アクティブステアリングとしている例もある。
アクティブサスペンション、電子制御サスペンション
サスペンションは、運動性能と乗り心地を司るが、両立が難しい。一般に、運動性能を高めると乗り心地が悪くなる、といった相反する性質をもつからだ。これに対してサスペンションのショックアブソーバーを電子制御することで、両立させることが可能だ。
昨今のスーパーカーでは段差に対応するため、車高を上げる機能を持たせているものもある。
まとめ
サスペンション形式をみれば、その自動車がどういった素性で何を狙っているのか、こだわっているのかが推測できるといってもいいだろう。外見からは分からないだけに見逃しがちだが、改めて諸元表を確認してほしい。
【参考・画像】
※ COPEN
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