
日本人とは不思議だと、ネイティブの日本人である私ですら感じるときが多い。
街のネオン、溢れかえる広告、店ごとに鳴らすもはや騒音でしか無い音楽など、何かとケバくて騒々しくて品の無い街角をを楽しんでいるかと思えば、樹木に囲まれた静寂の中で、枯山水に大海原や川の流れを感じて静かに時を過ごすことも楽しめるのだ。
そう、日本人はこのような風情の楽しみ方に“侘び寂び”を感じるのだという。
そのような「侘び寂び」を、ファッションでも極めたいとして立ち上げられたブランドが、クラウドファンディングサイトの『Makuake』でプロジェクトを立ち上げている。
それは、「墨汁染め」と「ろうけつ染め」という、古来から伝わる技法を掛け合わせた新しいデザイン手法の提案だ。
「侘び寂び」をコンセプトにした服を作る
「侘び寂び」と口にしてしまうが、本来は「侘び」と「寂び」とは別々に使われていた言葉だ。
乱暴に説明してしまえば、「侘び」は、貧しい中にも満たされた気持ちを見出そうとする意識で、「寂び」は、静寂の中に豊かさを感じようとする美意識といったことになるようだ。
言葉にすると何やらややこしいが、日本人は「侘び寂び」という言葉だけで、感覚的に両者を理解できてしまっているのではないかと思う。
この「侘び寂び」を現代に蘇らせることをコンセプトにして立ち上げられたブランドがYOHJI YANAGISAWAだ。
YOHJI YANAGISAWAは、服作りに「侘び寂び」を取り入れるために、墨汁染めとろうけつ染めという技法を掛け合わせることにした。
2014年から東京で活動を始めたYOHJI YANAGISAWAのメンバーは3人で、落ち着く場所が神社だという20代後半の若者達だ。
彼らは日本古来から伝わる墨汁染めとろうけつ染めの技法を研究した。また、パターンや縫製などの工程全てを手作業で行っている。

古来から伝わる染めの技法を掛け合わせる
墨汁染めは、その名の通り書道や水墨画で使用する墨汁を使って布を染める技法で、古来では僧侶の質素な服を染めるために使われたという。
染める度に天候によって染まり具合が変化するところがおもしろみだそうだ。

ろうけつ染めは、布を染める際に、染料のしみこみ具合を変えるために予め蝋で布に模様を描いて防染する技法だ。

この技法も古くは奈良時代から行われていたらしく、蝋の温度によって染色の具合が変化し、また蝋のひび割れに染料が染みこむと、独特な風合いが醸し出せるという。

これらの技法を掛け合わせることはかなり難しいことらしく、彼らは未だ理想に到達していないそうだが、すでにできあがっている作品は独自の味わいを持ったかっこいい仕上がりになっている。
機械による画一的な量産品や、派手な服に飽きたという方は、一点一点手作りで、しかも天候に左右されてしまう偶然性も取り入れられた日本発のこのブランドに、注目してみてはいかがだろうか。
【参考・画像】
※ 墨汁染×ろうけつ染×モード服を世界へ-日本古来の美意識の復活 – Makuake
【動画】
※ YOHJI YANAGISAWA Working Process – YouTube
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