財宝は誰のもの?
ところで、これらの財宝が発見された場合、その後の所有者は誰になるのだろうか?
これが一番デリケートな部分である。ナチスは、収容所に送り込んだユダヤ人が所有していた財産も、容赦なく自分のものにしていた。そこから終戦を経て、それらがあちこちに分散してしまった。
ここで、一つ例を挙げよう。「何も知らずに大金を出して買った彫刻が、実はナチスがユダヤ人から奪ったものだった。そのユダヤ人の子孫はチェコ在住で、現在の所有者はアメリカ人。両者とも所有権を主張して譲らない」という場合、これはどのように解決すればいいのか?
決定的な手段は、実はない。「カネを出して買った」という事実を覆すことはできないから、結局は元の所有者の遺産相続人が、その分を支払うことで作品を取り返すという展開がパターンの大半だ。
ましてや、どこかのトレジャーハンターが掘り進めた結果見つかった財宝は、貴金属だろうと美術品だろうと絶対に発見者のものにはならない。だからこそ冒頭の二人は「換算総額の10パーセント」という形で要求してるのだろうが、現地当局から見れば「彼らが勝手にやったこと」である。個人的な行為に国家がカネを出すのかといえば、それは難しいだろう。
明日の億万長者を夢見るトレジャーハンターには大変申し訳ないが、ナチスの財宝は決して“カネにならない”のだ。こういうミステリーは、ロマンと謎解きの快感だけでできている。あくまでも先立つものを求めているならば、額に汗して働こう。
【参考・画像】
※ ナチスの財宝列車、70年ぶりにポーランドで発見か – CNN
※ themonnie / Cologne by Night – Flickr
※ three gold ingots and water droplets on a black background. shallow depth of field. – shutterstock
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