前回記事:プリウスPHV開発責任者に聞いた「なぜPHVに注力するのか」
今回は、プリウスPHV開発責任者の豊島浩二氏にPHVらしさ、今後競争が激化するEVについて伺った。
PHVらしさとは?・・・
実は、「PHVらしさって何?」って社長にも言われるんですよ。
ーーー え、豊田社長にもですか!
例えばハイブリッドで成功したプリウスは特徴的な形をしていました。トライアングルシルエットといって、横から見ると三角形のかたちをしているんです。これは、空気力学を極めた形なんです。実は世界的に見ると、車って、セダンの形が人気なんですね。でもプリウスは年に40万台も売れている、それはハイブリッドの形はこういうものだ、と新しく規定したからなんです。
ーーー ホンダのインサイト(生産終了)もプリウスに似てましたが、確かに一目でハイブリッドだと分かります。
これは個人的な視点ですが、まずPHVはEVと違いを明確にしないといけません。EVというのは現在の技術では、電池をたくさん乗せなければ航続距離が伸ばせないので、自然と背の高いSUV形状になりがちです。例えば日産リーフやBMW i3がそうですよね。テスラSはスポーツタイプですが、車としてはかなり大きいですよ。
ーーー アメリカで大人気ですね、テスラS。
ええ、ですが日本の交通状況だと、大きすぎるのではないでしょうか。電池を積むスペースの分、小さく作るのが難しいんですよ、EVは。EVを成立させるには車体で相当苦労するんです。
でもPHVは、電池の積載量が少ないので、EVほど大きくならず、コンパクトに小さく、低く作れます。車体設計の自由度が高いから、EVにはない、EVではできないボディを選びたいです。クルマのボディタイプは、地域によって嗜好が違い、アメリカではセダンやSUVが好まれますが、PHVらしさを考えた時に、まず先進性や次世代の本命という印象をもっていただきたい。
そう考えた時に、ハッチバックは先進的なイメージを与えられますから、やっぱりハッチバックの中に電池を詰め込んでいくのは、PHVらしいんではないでしょうか。
PHVをプリウスベースにした理由・・・
ーーー PHVをプリウスベースにした理由はなんでしょうか。他の車体ベースや新規設計は考えなかったのでしょうか。
「プリウス」というのは環境車のブランドだと考えています。。特に今回はHVベースでしたからプリウスでPHV、というのは自然な流れでした。例えばこれがPHVではなくFCVやEVだったらプリウス以外の選択肢を使うでしょうね。iQに対するeQみたいな感じで。
ーーー アメリカではアクアも「プリウスC」という名前でプリウスブランドですね。
そうです。ブランドをかえるとまたゼロからブランドイメージを構築しなければならないので、プリウスが築き上げてきたブランドを活用していこう、とPHVでは考えました。
*プリウスPHVを企画中、ブランド名を変更したアクアはまだなかった。アクアはアメリカでは「プリウスC」とプリウスブランドで展開している。
競合となる他社製品の印象・・・
ーーー BMW i3はRRレイアウトを採用しましたが、次期プリウスPHVがFF以外のレイアウトを採用する可能性はあるのでしょうか?
BMWの i3はEVですが、航続距離をできるだけ長くするためにレンジエクステンダー(発電用エンジン)を載せるのが前提だったんじゃないかな、と。
ーーー たしかにリアモーターは片側によっていて、逆側は発電機を載せる空間が予め用意されていますね。でもFFでも良かったんじゃないでしょうか。
BMWの哲学として、前後重量配分は50:50というのがあるから、そうなると自然とRRになったんだと思います。あの会社は効率よりも哲学を優先させますから。
ーーー 効率よりも哲学!(笑)
BMWブランドなら後輪駆動だし、走る歓び、ということなんでしょう。
ーーー たしかに、FFのMINIはBMWブランドではなく、MINIブランドですからね。
あと短いフロントにモーターとレンジエクステンダーの両方を詰め込めなかったんじゃないかな。レンジエクステンダーを付けるのが前提で100kmくらい航続距離が上乗せできたというのは 、EVの欠点をカバーしたひとつの解です。これは、あくまで予想ですけどね。
ーーー 走る歓びといえば、すごく加減速が強くて、乗り味が独特ですね。
私も乗りましたが、回生ブレーキが強烈でアクセルオフだけで停まったり、ゴーカートみたいな面白い乗り味です。安心感を得るためにレンジエクステンダーは必要だから、電池の性能がこのままなら、ピュアなEVは全部 BMW i3と同じような作り方になる可能性は高いかと思います。
ーーー 三菱もアウトランダーPHEVを出して競合が増えてきていますが、どのように考えているでしょうか?
三菱アウトランダーはエンジン車の存在感がないので、PHV専用車といってもいいでしょう。
このような競合がでてきて初めて効率を含め、我々の技術が訴求できます。各社ようやく出そろってきた今だからこそ、お客様がそれぞれの違いや、特徴を理解してくれます。ですから競合が増えるのは実はウェルカム。
環境車である以上、みんなが使って普及してはじめて地球に優しくなれるんです。