ベネチアやパリ、ストックホルムなど、海外の美しい都市には必ずといっていいほど、川辺や運河が観光や交通の水路として活用されている。そして、その水辺の景観が考えられ、その街の特徴を印象づけている。
東京では河川が高速道路の下になっていたり、景観上でも交通面も、未だ未開発の感が否めないが、東京の水辺空間をもっと豊かにし、新たな水上交通を開発する動きが出てきた。
羽田空港~秋葉原間を船でコネクト
これは、羽田空港から都心の秋葉原を結ぶ新たなルートでの船の運航だ。国土交通省や千代田区などを含む『秋葉原・天王洲・羽田空港舟運プロジェクト準備会』が行うもので、試験運航を踏まえて課題を検証し、実現すれば羽田と東京都心を結ぶ初の定期航路となる。
シルバーウィークを含む、9月19日(土)から26日(土)の一般利用者向けの試験運行の前に、報道関係者を対象とした試乗会が行われた。
試乗は秋葉原の万世橋からスタートした。万世橋はかつて鉄道の駅もあり、大正初期には銀座と並ぶ繁華街だった場所だ。江戸時代には、物資の輸送大動脈だった神田川には、いまだ船着き場が残っている。当時のにぎわいを想像しながら秋葉原の万世橋をスタートし、神田川を下り、隅田川に合流する。
合流地点手前の柳橋界隈では屋台船が数多く停泊し、老舗のお店からは三味線が聞こえ、かつて花街だったこの地域で盛んだった、“舟遊び”の様子を束の間体験できる。
隅田川には、浅草からお台場や浜離宮を結ぶ主に観光用の水上バスルートがあり、それらの船とも行き違いながら、永代橋から、勝鬨橋、レインボウブリッジまで、数々の特徴ある橋をくぐり、東京湾に向かっていく。
このルートでは30以上の橋を見られるのも特徴だ。水辺の景観は、統一性はなく開発の余地が十分にあるが、水辺から東京の景観を眺めるという経験は、観光客ならずとも楽しめるに違いない。

今回のルートは約20km、約2時間半というゆっくりした船旅だが、使用する船舶や運航速度などによっては、時間短縮も可能だろう。外国人観光客などの需要も、乗船、場所の公共交通などとのアクセスを整備すれば、可能性は十分あると思われる。
何より、都内の運輸部門のCO2排出量のうち、自動車が約9 割を占めていることを考えれば、より環境に配慮した移動手段である“舟運(しゅううん)”を今一度見直す必要がある。特に川を下る場合は、車に比べて大幅なCO2削減になる。
かつて東京の動脈となっていた神田川、隅田川を活用し、新旧の東京を感じながらの移動は、交通手段だけに終わらない東京の新たな発見がある。
水辺の開発も含め、新たなコースの定期運航に向けて期待が高まりそうだ。
【参考・画像】
※ 羽田~秋葉原間の舟運の実現を目指した社会実験を実施します – 国土交通省
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