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外国人観光客はヒロシマを目指す、顕著化する日本人との「意識格差」と国民の誤解

広島を見学する戦士たち

実は筆者の高校時代、修学旅行先は広島だった。もちろん平和記念資料館や平和公園にも訪れたが、そこで思いもしない人物に出会った。

格闘家のセミー・シュルトである。この前日、セミーはK-1広島大会で武蔵を破り、余暇を利用して広島市を見学していたのだ。

何しろ彼は、2メートル12センチの“人間摩天楼”である。しかもプロレスラーの高山善廣を一方的に殴りまくってKOした試合から、まだあまり日が経っていなかった頃だ。“世界最強の男”が、プロのリングに憧れていた筆者の目の前にいるのである。

だが、声をかけることはできなかった。そういう雰囲気ではなかった。セミーは我々の視線など気にせず、展示物を熱心に見つめている。この日ばかりは堂々とした巨体を縮めるかのように、ただただ惨劇の遺物に息を飲んでいた。

のちにセミーは格闘技雑誌の取材で、「平和記念資料館を見学し、人類がいかに愚かな行為をしてしまったのかを知ることができた」と語っている。幼い頃から極真空手に打ち込み、常に日本へのリスペクトを胸に戦ってきたロッテルダム出身の戦士が「日本を知るために」と考え、行き着いた先が広島だったのだ。

そういえば、“鉄の爪”と呼ばれたプロレスラーのフリッツ・フォン・エリックにもそのようなエピソードがある。まだ幼かった息子たちを連れ、「いいか、よく聞きなさい。戦争など決して繰り返してはいけないものだ」と語っていたそうだ。

格闘家やプロレスラーは、日本以外の国ではストリッパーやポルノ俳優と同じレベルの扱いである。だが、日本では一流アスリートとして誰しもが尊敬の眼差しを向けてくれる。だからセミーもエリックも親日家になった。そして真面目な彼らは、そうした“日本人の精神”の源泉を探ろうとする。

広島で彼らを目撃することは、決して偶然ではないのだ。