資産を把握されるようになる

さて、ここからは正直に暮らしている人たちには一概にデメリットであるとは言えない内容になる。むしろ社会正義や公平性の実現に必要だと評価する人も多いだろう。
マイナンバー制度は2018年からは、任意だが預金口座との紐付けが始まる。しかしこれは、2021年の義務化への足がかりになるかもしれない。
義務化が実現すれば、政府は個人の金融資産を正確に把握できるようになる。公平な社会実現のためメリットとしての側面もある。
どのようなことか。例えば以下の様な3例が挙げられる。
■1:社会的弱者でないことがバレる
現在、行政は個人の資産を把握できないため、税金や社会保障の金額を所得ベースで算出している。
そのため、数億円の資産を持っていても、給与や事業での所得が無ければ低所得者と判断され、社会的弱者と判断される。
その結果、資産家でありながら、頑張って働いている資産の無い会社員より手厚い社会保証を受けられるのだ。
これは明らかに不公平感が出る。しかしマイナンバー制度が個人資産まで把握できる仕組みに展開されれば、この様ないびつな状況が緩和される可能性がある。
■2:贈与税のごまかしが難しくなる
例えば金融機関を通して贈与する場合、年間で110万円までは無税だ。これを利用して、例えば400万円を無税で贈与するために、4分割して別々の口座に振り込む手段がある。
しかし、マイナンバー制度が銀行口座と紐付けされていれば、税務当局に名寄せした金の動きが把握されてしまうため、課税対象になる可能性がある。
■3:総合課税への道
そして、富裕層が最も神経を尖らせている可能性があるのが、マイナンバー制度が総合課税への伏線ではないかということだ。
現在、銀行預金や債券等の利息、株式や投資信託・FX等の利益にかかる税率は、基本的には分離課税となっており一律だ。従って資産運用ができる富裕層ほど、累進課税から逃れることが可能になっている状況だ。
一方、給与所得がメインの一般的なサラリーマンは、働いて働いて稼げば稼ぐほど累進課税で持って行かれる仕組みだ。
この状況を、マイナンバー制度がひっくり返す可能性がある。富裕層の金融資産や金融所得を把握し、総合課税を行えば、莫大な税収増加に繋がるからだ。
以上は、筆者のような貧乏人には関係ないが、富裕層にとっては、今から資産を何処に逃がしてどう運用するか、といった悩みの種になるのだろう。羨ましい悩みだが……。
【参考・画像】
※ PathDoc / Shutterstock
※ tooru sasaki / PIXTA
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