IT/テック

本当に怖い「ドーピング」クスリ漬けで性別変わった選手も

「元」女子選手の悲劇

shutterstock_336916232
source:http://www.shutterstock.com/

 

80年代半ば、女子砲丸投げのとある東ドイツ選手が注目を集めていた。

彼女の名前は、ハイジ・クリーガー。女子選手とは到底思えない“筋肉の山”のような肉体の持ち主で、1986年のヨーロッパ選手権では21メートル10センチの記録で優勝している。

ちなみに、その2年前に開催されたロサンゼルスオリンピックでの同種目の優勝記録が、20メートル48センチ(西ドイツのクラウディア・ロッシュが投擲)だから、時期がわずかにずれていればオリンピックも充分に狙えた選手である。

しかも、この時のヨーロッパ選手権の開催地は、西ドイツのシュトゥットガルトだ。東ドイツ政府はクリーガーの優勝を“仮想敵国での勝利”という謳い文句で大いに宣伝した。

だが、クリーガーが1988年のソウルオリンピックで表彰台に立つことはなかった。

それどころか、彼女は長年のドーピングがもたらす副作用に肉体を蝕まれ、ホルモンバランスの異常が顕著になっていく。もはや女性として生活することが困難になり、ついには性転換手術をして「アンドレアス・クリーガー」という名の男性になってしまったのだ。

そして、さらに重要なのは、クリーガー自身は自分が投薬をされていたとは思っていなかったということだ。いや、クリーガーだけではない。当時の東ドイツ選手はコーチから「これはビタミン剤だ」と言われ、それをまったく疑うことなく飲んでいたという事実が明らかにされている。

東ドイツ代表選手として活動していた元アスリートの多くは、心臓疾患や糖尿病などに苦しんでいる。

罪なき若者の夢と才能を貪り尽くした国家的犯罪は、今もスポーツ界の黒歴史として記憶に刻み込まれてしまっている。