
パリ時間11月13日の“その時”は、普段ならば一週間のうちで一番華やかな時間帯だった。
金曜日の夜は誰しもが浮き足立っている。パブに行ってビールを注文し、フランス対ドイツのサッカーの試合を観戦する。ボールがドイツ代表チームのゴールに接近するたび、店内は歓声に包まれる。
店の外では若いカップルが愛を語り合っている。今度の休暇はどこへ旅行に行こうか、そうだモナコへ行こう。そう言いながら二人はやがてキスを交わす。
世界中のどこにでもある、何気ない光景がそこにも存在した。人は未来を知ることなどできない。
だが街角に潜んでいた悪魔は、日常を満喫していたパリ市民を地獄の底に突き落とした。
風と肉を切り裂く爆風、そして狂ったように火を噴くカラシニコフ銃。ごく平穏な週末のパリは、一瞬にして地獄と化した。再び動き出したテロリズムの歯車。“花の都”は鮮血の色で染まった。
そしてその血しぶきは、地球上のすべての国に飛び散った。