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「NewsPicks」100万ユーザー突破、経済メディア世界一は実現可能か?梅田代表と佐々木編集長が語る想い

NewsPicks, ニューズピックス,ニュースキュレーションアプリ

 

2015年12月11日、ニュースアプリ『NewsPicks(ニューズピックス)』が、登録ユーザー数100万人を突破した。

同社の発表によると、スマートフォンをベースにした経済ニュースアプリの登録ユーザー数としては、国内最大規模になったとのことだ。

だが、先行するニュースアプリではダウンロード数1,000万を超える『SmartNews(スマートニュース)』や『Gunosy(グノシー)』というメジャーアプリがあり、PC時代の覇者『Yahoo!ニュース』やスマホの申し子『LINE NEWS』も新時代のニュースの主役の座を狙っている。

更には、グローバルスタンダードのSNSである『Facebook』や『Twitter』、スマホOSの提供側であるAppleやGoogleまでも参戦し、ニュースをめぐる主導権争いは熾烈化の一途だ。もちろん国内における経済メディアの絶対王者日経新聞も黙ってはいない。言うなればまっただ中である。

そんな中で100万人達成というニュースは、インパクトに欠けるものとして聞こえるだろう。大宇宙を舞台にした壮大な戦い“NEWS WARS”の中で、巨大戦艦も登場しない極めて局地的なゲリラ戦にしか見えないかもしれない。

しかし『NewsPicks』を率いる梅田優祐氏は強い自信をもってこう語る。

<世界一の経済メディアを目指す>

 

梅田氏は確信している。ニュースにはまだ眠っている潜在能力がある、と。それを解き放つ鍵の一つが『NewsPicks』なのだ、と。

果たしてニュースは覚醒するのだろうか。筆者の私もヘビーユーザーのひとりである『NewsPicks』の歩みを追いながら考えてみたい。

 

「NewsPicks」前夜

『NewsPicks』の歩みを語り始める前に、その誕生の5年前から話を進めることが必要だろう。そうでなければ『NewsPicks』の存在の意味と「世界一を目指す」その宿命が見えてこないからだ。

 

2008年、のちに『NewsPicks』を世に出すことになる会社UZABASE(ユーザベース)が産声をあげた。

それまで投資銀行に勤務していた梅田優祐氏は、来る日も来る日も世界から集まる膨大な経済ニュースと格闘していた。そこから重要な情報を抽出しレポートをまとめるという激務の中で、もっと効率的で合理的な情報収集の形があるのではないかと考え始めた。そこで、同僚であった新野氏、高校以来の友人稲垣氏と共にUZABASEを立ち上げる。

翌年2009年には、企業・業界分析を手掛けるオンライン情報サービス『SPEEDA』をリリース。ユーザー目線で企業情報や経済情報が網羅的かつ効率的にまとめられ、専属アナリストたちによる的確なレポートが日々更新され続けるという、革新的なサービスだ。

国内の上場・非上場企業のみならず、世界180ヶ国をカバーした企業の財務・株価データ、550を超える業界動向、各種統計データ、経済ニュースなど、経済に関するあらゆる情報が一つのプラットフォーム上に集約されており、東京・上海・香港・シンガポールそしてニューヨークと世界に拠点を築き、アナリストたちのネットワークを着々と広げている。『SPEEDA』の情報精度と鮮度の高さは、ワールドクラスと言っていい。

主だった金融機関や企業、研究機関、コンサルタントファームや投資家たちの間では、『SPEEDA』は、もはや欠かせない情報ツールとなった。だが、月額12万円というプロ向けの価格設定のため、残念ながら一般的にはほとんど知られていない。(人気ブロガーのイケダハヤト氏は、それを”社会的な損失”と評した。)

これでは、梅田氏の目指す“世界一の経済メディア”への道は遠い。経済に特化した世界でも稀に見る高度な情報群、そして優秀な専属アナリストやコンサルタントたちは、申し分のない強力なエンジンとなるだろう。経済活動に関わるプロたちを取り込んだ『SPEEDA』は、世界一へと導く道の、路面をしっかりと捉える片輪だ。

だが、これだけでは走れない。もう一つの車輪が必要だ。

“世界一の経済メディア”となるには、日々の生活の中で経済ニュースに接する一般ユーザーを、もう一方の車輪として巻き込まなければいけなかった。

強力なエンジンから伝わるパワーを基に、この両輪がシンクロしながら回転して初めて、日経もブルームバーグもロイターも成しえていない、経済ニュースを中心とした新しい世界を生み出すことができるに違いない。

 

「でも、どうやって人々を経済ニュースに巻き込めばいいのか?」

 

梅田氏は、投資銀行時代に一つの小さな希望を見つけていた。

その希望とは、ニュースのもつ潜在能力を覚醒させることだった。