環境に有害な冷媒を使わない
地球温暖化の影響で気温が上がりつつあるとすれば冷房や冷蔵庫の需要は高まる。その一方で、電力も求められるようになるので、エネルギーの消費や温室効果ガスの排出が増えることになりがちだ。したがって、冷却装置の高効率化、グリーン化は重要な課題のひとつといえる。
ザールラント大学のStefan Seelecke教授とAndreas Schütze教授らのチームが、ユニークな機構を用いた冷却装置のアイディアを発表した。環境に有害な冷媒を使わず、従来の冷却装置よりもずっとエネルギー消費量が少ないものだという。
そのために使用するのは形状記憶合金だ。ニッケル・チタン合金の形状記憶合金は、ある程度変形させても、一定の温度以上に加熱すると、もとの形状に戻る性質を持つ。それと同時に、熱を吸収したり放出したりもする。その性質を利用して冷却装置を作るのだという。
ニッケル・チタン合金は、力を与えて変形させると温度が上がる。いっぽう、その後周囲の温度と同じくらいまで冷めたあとに力を解いてやると、周囲の温度よりも20度くらい低い温度になる。
その仕組みを応用して、冷蔵庫の中でこの手の形状記憶合金のストレスを解いてやることで、冷却を行おうというのだ。逆に、冷蔵庫の外では形状記憶合金にストレスを与える。そのときに上がった分の熱は周囲に放出されることになる。
試作機を製作中

これまでの実験や研究をもとに、現在この原理を用いた試作機を製作中だという。その仕組みは、回転する形状記憶合金のワイヤーの束の片側に、熱い空気を通過させる。それと同時に形状記憶合金の束は回転していくにつれて力が加わるようにしておく。
そうしておいてあるていど回転したところで形状記憶合金にかかる力を解いてやり、冷ましてやったところに別の空気を通してやると、こんどは形状記憶合金がその空気を冷やすというもののようだ。
まだまだ開発の初期の段階のようだが、冷媒の代わりに形状記憶合金を使うと考えれば、それなりに納得ができるアイディアである。
実用化できるかどうかもまだわからない段階だが、少しでも“温室効果ガスの削減”ができる技術ならばありがたい。
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