
電子回路というと、プリント基板を想像するひとが多いだろう。平らで固くて、電子部品をつなぐ配線がプリントされている。
あれが、“伸びたり曲がったり”できるようになったら、なにが可能になるだろうか?
たとえば義肢の人工皮膚やロボット、洋服、あるいは人間の身体そのもにも電子回路を容易に搭載できるようになるかもしれない。
そんな導電性配線をスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが発表した。この研究は『Advanced Materials』誌で発表されている。
どの方向にも4倍伸びる?やわらかいプリント基板が作れるかも
通常、電気配線は基板にプリントされた固いものになっている。ところが、このEPFLの研究チームが開発したものは、ゴムのように柔らかく、どの方向にも4倍の長さにまで伸ばすことができるという。
また、何百回も伸縮させてもヒビが入ったりすることはなく、電導性も損なわれない。
そしてさらに、この研究は、この電気配線を使った柔軟性のある電子回路の開発にまで発展している。
金とガリウムを活用
この電気配線は金属でありながら部分的には液体でもある。こういった液体金属は、高い表面張力を持つため、これまでは比較的厚みのあるモノしか作ることができなかった。
「私どもは、独自で開発した堆積と構成の手法によって、非常に細い電気配線を作ることに成功しました。数百ナノメートルといった薄さです。それでいて非常に信頼性は高いものです」と、研究者のひとりStéphanie Lacour氏はいう。
この研究の秘密は、金とガリウムを使った合金を使っていることにあるという。ガリウムは高い電気性能を持っているだけでなく、融点が非常に低く、摂氏約30度である。
ヒトの手の温度でも容易に溶ける一方で、過冷却によって30度以下の室温でも液体を保つ。そして、ポリマーと接触してもバラバラにならないように金の層がガリウムの均質性を保つことができるという。
このような、柔軟性の高い電子回路が普及すれば、電子デバイスの形はまったくちがうものになるだろう。
人体に対しても“ウェアラブル”という以上のフィット性が実現するかもしれない。IoTはまだまだ加速しそうだ。
【参考・画像】
※ École polytechnique fédérale de Lausanne (EPFL)
※ LDprod / Shutterstock
【動画】
※ Stretchable electronics that quadruple in length – YouTube
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