
南アジアに位置するパキスタンは、畜産業が盛んな国のひとつ。
酪農乳業の専門機関IFCN(国際農場比較ネットワーク)によると、パキスタンの生乳生産量は、2011年時点で、年間4,160万トンに達し、インド、米国に次ぐ、世界第三位の規模となっている。
しかしながら、その農家の多くは、伝統的な家畜飼育を行っているため、生産性が低いのが現状だ。
「牛のためのウェアラブル端末」がパキスタンで誕生
『Cowlar(カウラー)』は、パキスタンの首都イスラマバードを拠点とするスタートアップ企業『E4 Technologies』によって開発された、牛のための“ウェアラブル端末”。
耐水性と耐久性に優れた首輪型の端末で、牛の首に装着すると、内蔵されているセンサーを通じて、体温を自動的に計測し、食事や睡眠など、日常の行動をリアルタイムで記録する。
データ解析で「畜産の生産性」を向上
『Cowlar』は、牛の状態をデータで可視化するだけでなく、その分析結果をもとに、必要なアクションや留意すべきポイントを具体的に指南してくれる点が特徴だ。
クラウド上に集められた計測データは、独自のアルゴリズムで解析され、発情周期の予測や疾病の早期発見など、有用な分析結果が、その都度、農家にテキストメッセージで通知される仕組み。
酪農や畜産の専門知識に乏しい農家でも、『Cowlar』を活用することで、家畜の健康管理はもちろん、妊娠率向上や、産乳量ロスの軽減など、畜産マネジメントの精度を高め、生産性を向上させることができる。
畜産分野でも広がる「IoT活用」
『Cowlar』の利用には、1台あたり69ドル(約7,600円)に加え、月額3ドル(約330円)のサービス料が必要。
『E4 Technologies』の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のUmer Adnan氏によると、『Cowlar』の導入によって、牛1頭あたり毎月500ドル(約55,000円)の収入増が見込めるという。
『Cowlar』のほか、アイルランドの首都ダブリンでは、牛の分娩のタイミングを通知するソリューション『Moocall』がリリースされ、日本でも、大分県別府市のリモート社によって、牛の分娩監視システム『モバイル牛温恵』が開発されている。
畜産の生産性向上に、センサー技術やIoT(モノのインターネット)を活用する事例は、世界各地に広がりはじめているようだ。
【参考・画像】
※ Cowlar
※ A summary of results from the IFCN Dairy Report 2012 – IFCN
※ Moocall
※ モバイル牛温恵
【関連記事】
※ すべての命を森に活かす。プロの狩猟家が進める「自然資源」の好循環