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「現代の目安箱」アプリがインドネシアで大人気 インフラ改善の決め手となるか

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Photo credit: Matthew Kenwrick via Visual hunt / CC BY-NC-ND

「保育園落ちた日本死ね」という文言が、全国的な共感を呼んだ時期がある。その表現については賛否両論あるが、一つ言えるのは「待機児童問題が深刻化している」ということだ。

託児施設もインフラストラクチャーの一つであるが、そういう認識の薄い政治家が首長になると大変なことが起こる。余計な施設ばかり増えて、肝心の保育園や幼稚園が一向に建てられないという事態がすでに発生している。

そうしたことを市民が告発するのに、我が国では「日本死ね」という過激な表現を使うことでしか手段がない。

ところが東南アジアの新興国インドネシアでは、誰しもが即座に行政の不備を告発できるシステムが整いつつある。
 

インフラの不備を可視化するアプリ

ジャカルタ州政府が開発した情報アプリ『Qlue』は、爆発的にユーザー数を伸ばしつつある。

インドネシアは、インフラの脆弱性が長らく指摘されていた。壊れた道路がいつまでも整備されない、街の片隅がゴミ溜めと化している等々、とても一国の首都とは思えない光景があちこちで繰り広げられている。

そこでジャカルタ州は、市民からのインフラ不備に関する通報を可視化することにした。

『Qlue』には亀裂の入ったアスファルトや停電の原因などの写真が、市民から投稿されている。そしてそれらを全世界のユーザーがシェアすることにより、「ジャカルタのインフラ再整備待ったなし」という状況に自らを追い込むのだ。
 

都市計画と官僚主義

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source:http://www.qlue.co.id/

ジャカルタでは、毎年1月から2月にかけての時期が最も困難を要する。

なぜならこの時期は雨季で、排水機能が充分でないジャカルタはたびたび冠水の被害に見舞われる。雨水を効率よく処理するというシステム自体が、まだ備わっていない。

そうしたことはすでに何年も前から叫ばれてはいるが、インドネシアの官僚主義がインフラ改善を阻害していたという面もある。
ならば、ジャカルタの「恥部」をいっそ全世界に公表してしまえというのが州知事バスキ・プルナマ氏の狙いのようだ。
 

新興国ならではの発想

市民が都市インフラの不備や改善点を探し出し、写真に撮って投稿する。まさに新世代的な「民主主義」が、インドネシアで始まったのだ。

こうしたことは、経済先進国ではなく国民平均年齢の若い新興国がむしろ得意とすることではないのか。

現在日本を騒がせている大都市首長の不正は、該当の都市ならず全国民を激怒させている。だがここまで騒動が激化しているにもかかわらず、日本ではリコールを求めるデモがなかなか発生しない。
「日本人は大人しすぎる」と言われる所以だが、インドネシアではそうは行かない。役人の力が相対的に強い分、市民は時として過激な行動に出る。大規模デモが暴徒化するということも珍しくない。

そういうことを防止する意味でも、ジャカルタ州政府は「目安箱」に力を入れざるを得ないのだ。

 

【参考・画像】

Qlue

【動画】

Introducing Qlue – Pelaporan Masyarakat Jakarta Smart City-YouTube