現在のIT業界にとって、キューバという国は「最後のフロンティア」である。

キューバは去年から急速に進展したアメリカとの国交回復を受け、ようやく国内のインターネット整備が始まった。厳格な共産主義国家のこの国では、一般市民がインターネットを利用するということすら今までできなかったのだ。
だが、IT界の巨人Googleがキューバに進出すると、閉鎖的な環境に大きな穴が空いた。今やキューバ市民は、文明の利器がもたらす膨大な情報を享受するようになった。
初めてネットに接触した市民
日刊工業新聞社が運営するwebメディア『ニュースイッチ』に、このような記事が配信された。
キューバでGoogleがブームになっているという内容のものだ。
“キューバで米グーグルのテクノロジーセンター(ハバナ)が人気を集めている。3月にオバマ米大統領がキューバを訪れた際に開所して話題になり、無料でWi-Fiを利用できるため連日、多くの地元住民が押しかけている。”(ニュースイッチ 2016年6月3日付記事より引用)
先述の通り、キューバではつい最近まで一般市民がネットに触れる機会はほとんどなかった。何しろ、利用料金が法外である。国営通信企業Etecsa社が提供するネット接続プランは、1ヶ月で100米ドル以上もの料金である。そのような大金を支払えるのは、外国人が宿泊する5つ星ホテルと政治の中枢にいる特権階級のみである。
そうした事情を知っておけば、Googleのテクノロジーセンターがいかに「革命的」かということが理解できる。
今夏にローミングサービスを実施
また、今まで国内の回線事業を牛耳っていたEtecsaも、徐々に変化しつつある。
これからキューバに外資が流れ込み、インターネットの普及が進めばEtecsaは簡単に倒れてしまうだろう。共産主義国家の国営企業が、経済自由化とともに消滅してしまった例はいくらでもある。
Etecsaは先手を打ち、世界的通信業者T-Mobileとの提携に乗り出した。今夏からT-Mobileは、キューバ国内でのローミングサービスを始めるという。
これはどちらかと言えば「キューバを目指す旅行者向け」という意味合いが強いが、それでもこの取り組みは「キューバ国民向けサービス」の布石だということに疑いの余地はない。
キューバ市民の境遇
また、キューバには「家族がアメリカにいる」という境遇の市民が多いことも忘れてはいけない。
メジャーリーグにもキューバ出身の選手が多く在籍しているが、「息子夫婦がアメリカに亡命した」というような理由で離れ離れになっている家族がキューバにはたくさんいる。
そうした家族間連絡が、インターネットを通じて行えるようになったのだ。
アメリカ・キューバの国交回復は、アメリカ国内でも保守派からの強い反発があった。だが蓋を開けてみれば、ITビジネスに大きな好影響を与えているということが窺えるのだ。
【参考】
※ キューバでGoogle人気。テクノロジーセンターに無料Wi-Fi環境を提供 – ニュースイッチ
※ T-Mobile customers can roam in Cuba this summer – The Verge
【画像】
※ T-Mobile Offering Cheap Calls and Roaming to Cuba – YouTube