
地球環境に影響をもたらす食料廃棄物
米農務省(USDA)によると、米国の食料供給量全体に占める食料廃棄物の割合は30〜40%。2010年の1年間で、1,330億ポンド(約6,033万トン)の食料が廃棄され、その金額規模は1,610億ドル(約17.8兆円)にのぼっている。
また、米環境保護庁(EPA)によると、食料廃棄物の97%以上が埋立処分されており、これによって、二酸化炭素の21倍もの温室効果を有するメタンガスが発生することも、地球温暖化防止の観点から懸念されている。
食料廃棄物をオーガニックな肥料と土にリサイクル

『EcoScraps(エコ・スクラップス)』は、“grow gardens, not landfills(埋め立てせずに、庭を育てよう)”をコンセプトに、米ユタ州プロボで2010年に創設されたオーガニック園芸用品ブランドだ。
有機肥料や有機培養土として販売されている『EcoScraps』の商品は、提携先の小売店や飲食店などから不要となった野菜や果物を収集し、米オーガニック監査委員会(OMRI)が認証したプロセスに基づき、微生物の働きだけで分解し、堆肥にしたもの。
作物の成長に不可欠な窒素やリン、カリウムなどの養分が豊富に含まれ、他の厩肥や化学物質を添加していないので、子どもやペットがいる家庭でも安心して使うことができる。
大手小売チェーンと提携

『EcoScraps』は、その提携先として、Target(ターゲット)やWalmart(ウォルマート)ら、大手小売チェーンが名を連ねているのも特徴だ。
たとえば、Targetでは、2013年から、食料品部門が排出する食料廃棄物を『EcoScraps』の商品にリサイクルし、1,700を超える全米の店舗で販売。地球環境の持続可能性と事業の収益性を両立させた“循環型の事業モデル”に、いち早く取り組んできた。
事業者・消費者・地球環境のWin-Win-Winを実現
従来、食料廃棄においては、収集運搬や処分のための費用を事業者が負担し、埋立処分によって環境負荷がかかる、事業者にも環境にも負担はあれど利益のない“Lose-Lose”の関係が一般的であった。
『EcoScraps』では、食料廃棄物を堆肥にすることで、埋立処分による環境負荷を軽減できるのはもちろん、事業者は品質の高いオーガニック園芸用品として商品を市場に提供でき、ユーザーは、これを利用して、豊かな土壌で作物を栽培できる。
事業者と消費者、そして地球環境を、“Win-Win-Win”の関係でつないでいる点が秀逸だ。
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