
6月初めから現在まで、世界のガジェットメディアは『ルミゴンT3』というスマートフォンの話題を大きく報道した。
製造メーカーと通信キャリアのつながりがあまりに強固な日本の場合、単に「新しいスマホが発表される」というニュースだけでは盛り上がりに欠ける。それは結局、国内の通信キャリアがその機種の販売に積極的でなければ一般層は興味を持たないからだ。
だが海外では違う。日本ではほとんど注目されていない新機種が、欧米メディアでは話題の中心になっているという現象がしばしば起こる。
今回はその一例として、ルミゴンT3を紹介しよう。
暗闇でも撮影可能
日本はノキアやエリクソンの力なしに携帯電話利用者を増やした、非常に稀有な国である。
どこの国でも、携帯電話加入率の歴史を語るのにはこの2社の存在は欠かせない。そしてノキアはフィンランド、エリクソンはスウェーデン資本の会社である。北欧企業がモバイル分野に強いということは、世界の常識だ。
その知識を前提に、デンマーク資本であるルミゴンの新製品について語っていこう。
このT3は、北欧メーカーらしい「部屋に馴染む」デザインが特徴的だが、欧米メディアではそのカメラ機能が特に注目されている。
T3のカメラは、暗視撮影機能が備わっている。今まで夜景撮影に対応する機種がなかったというわけではないが、 T3の場合は街の夜景どころか暗闇での撮影を可能にするという。
北欧ならではの機能か
こうした点は、国土面積が人口に対して広くアウトドアも盛んな北欧メーカーらしい判断かもしれない。
そもそも北欧で携帯電話の普及が早かった理由は、国全体が閑散としているからという指摘もある。そうした場所に電話線を敷くと割高になってしまうが、携帯電話はそうした手間を一切省ける。
そしてそういう国では、国中どこにでも街灯があるというわけではない。少なくとも日本にいるよりは、暗闇の環境下に遭遇する可能性は高いだろう。
すなわち、T3の暗視撮影機能は「現地のニーズに合わせている」ということにもなる。
日本との相違点
さらにそこから、日本と北欧との通信モバイルの位置付けの相違が見えてくる。
先述の通り、北欧諸国の市民にとって携帯電話は生活に必要不可欠のツールだ。「それがなければ暮らしていけない」という始点から物事が始まっている。
だが日本は、当初から全国津々浦々に有線電話があった。だから携帯電話が普及するには、トレンドの波に乗る必要があった。「これがなくても暮らしていけるが、あれば生活が豊かになる」というのが始点である。
従って、同じスマートフォンと呼ばれる物でも発展の行き先が違ってくる。モバイル機器はまさしく、生物の進化によく似た道筋をたどっているのだ。