上司に相談したいことがあっても、なかなか忙しそうで声が掛けにくい。

そんな時に、「上司の○○さんに会うには午前中がおすすめです」とAI(人口知能)がアドバイスしてくれる技術が開発されていた。
このように、AIが職場のコミュニケーションの取り方をアドバイスすることで、職場の幸福度を上げようというのだ。
6月27日、日立製作所は社員が装着したウェアラブルセンサーによって社員の行動をAIに把握させ、社員同士の人間関係を良好にして社員の幸福度「ハピネス度」を高める実験を開始したことを発表した。
ウェアラブルで社員の行動を追跡し、AIが解析する
同社が社員の行動記録を解析させるのは、「Hitachi AI Technology/H」と呼ぶ人工知能だ。
実験は同グループの営業部門で行われており、約600人の従業員に名刺型のウェアラブルセンサーを首から提げて装着させている。

何となく、猫が首に鈴を付けられている状況を思い浮かべてしまうが、このセンサーが各人の行動を追跡するのだ。
そして各人の行動記録がAIによって解析され、「ハピネス度」を高める為に有効な行為をアドバイスする。アドバイスは各人のスマートフォンを通して通知される仕組みだ。

「ハピネス度」を高める為のアドバイスは、AIが解析した結果により、誰と誰がいつコミュニケーションを取れば人間関係が良好になるか教えてくれる。
例えば、「○○さんとの5分以下の短い会話を増やしましょう」、「上司の□□さんに会うには午前中がおすすめです」といった具合に、各人の行動から都合の良い時間を推測したり、コミュニケーションが不足している社員同士が話しをするように促したりする。
幸福度の高い組織は生産性を高めるという仮定
今回のシステムの特徴は、「ハピネス度」を個人では無く、組織全体として高める事を目的としていることだ。
同社の実験によれば、組織全体の「ハピネス度」が高いときは低いときに比べて1日当たりの受注率が34%もアップしたという。つまり、「ハピネス度」を高める事が生産性を高めるというわけだ。
確かに、どうせ働くなら楽しく働ける方が効率は上がりそうだ。
同社は既に、三菱東京UFJ銀行や日本航空など13社でも実験を行ってきている。
AIは何処まで人の機敏を理解できるか
以上の様に、組織としての「ハピネス度」を高めるためにAIが使われようとしているわけだが、なんだか四六時中監視されているような気味の悪さは残る。
例えば、喫煙者であれば、1日の内どれくらいの時間を喫煙所で過ごしているか把握されてしまう。
また、便秘や下痢でトイレに長く籠もっていたことも監視されているような気がするし、一人で息抜きしたくてコーヒーを買いに行く時間は暇なのだろうと判断されて、誰かとの会話に使うようにアドバイスされるかもしれない。
また、できれば関わりたくないから敢えて話さないようにしている相手と、「もっと会話しましょう!」などとアドバイスされるとウザイAIだ、と思ってしまうかもしれない。
この辺りの人間の機敏と言ったものも、AIは学習するようになるのだろうか。
【参考】
※ ニュースリリース:2016年6月27日:日立