6月25日をもって、世界最大の広告祭『Cannes lions International festival of creativitiy』が閉幕した。エントリー数は、昨年からさらに増え、43,000件を超える事例が集まった今年のカンヌ。
FUTURUS編集部がお届けするカンヌレポート。
まずは、第1弾として、「Health & Wellness Lions」のエントリーを中心に、海外の事例だが、日本においても同様の課題解決が求められる健康問題にまつわるものを紹介したい。
糖分の過剰摂取を戒める2つのアプローチ
糖尿病の発症件数は、増加の一途を辿り、国内では、厚生労働省が発表した平成26年「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は、男性で15.5%、女性で9.8%であり、過去最高を記録している。男性の6人に1人は、糖尿病の疑いがあるというショッキングなデータだ。
グローバルにおいても、世界保健機関(WHO)の発表によると、成人の糖尿病有病者数が2014年までに4億2,200万人に達し、1980年の1億800万人から4倍近くに増えている。
糖尿病を未然に防ぐために、糖分摂取をいかに抑えるか、各国でさまざまなアプローチがされる中、FUTURUS編集部が注目した2つの事例を紹介する。
フランスで始まった「砂糖デトックス」
まずは、フランスの事例「Sugar Detox」から。
これは、Intermarcheというフランスのスーパーマーケットが始めたキャンペーン。
-5%から、-10%、-20%、-30%、-40%、-50%と段階的に糖分量を減らしたチョコレートヨーグルトをパッケージで発売し、毎日食べているうちに自然と「砂糖デトックス」ができるというもの。
一度、糖分を減らした味に慣れてしまえば、通常のものは、甘く感じてしまって食べたくなくなるというよくできたアイデアだ。
誰もが驚くハチミツの作り方
同じく糖分摂取にスポットをあてたチェコの事例が、「BEES CAN FIND SUGAR WHERE YOU LEAST SUSPECT IT」である。
これは、健康食品チェーンのNAS GRUNTが始めたキャンペーンで、普段食べている食品に含まれる糖分量に対する関心を高める取り組み。
実は、蜜蜂は、糖分が15%以上含まれていれば、花の蜜だけでなく、どんな食品からでも、ハチミツを作り出すことができる。
このキャンペーンでは、実際に、ハンバーガーや、ドレッシング、キャラメルなど、普段、食べている加工食品からハチミツをつくることで、日常生活でどれだけ糖分を摂取しているのか、気づきを与え、普段の食生活を変えていこうというもの。健康食品チェーンならではの取り組みと言える。
乳がんのチェック方法を映像でわかりやすく伝える「Manboobs」
乳がん患者数は上昇の一途をたどっており、WHOの発表によると、乳がんは、2012年のがん患者数で肺がん(180万人)に次ぐ第2位(170万人)となっている。日本国内においても、 「2015年のがん罹患数、死亡数予測」(国立がん研究センター)によると、乳がん患者数は第5位となり、数字の上ではっきりと、すぐそこにある脅威と言える。
乳がんは、日頃のチェックを行い、早期発見することで、生存率が高まることはよく知られている。しかし一方で、乳がん検診の受診率は、日本国内で20%程度と言われており、いまだ低いのが実態だ。
そんな乳がんのチェック方法を伝えるための映像がアルゼンチンで公開された。
これは、女性の代わりに、太った男性をモデルにして、乳がんのチェック方法を解説するというもの。と言うのも、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアでは、女性の乳首が映った画像や映像は削除されてしまうので、女性モデルを起用すると、乳がん啓蒙映像であっても、SNS上で広く伝えることができなかったのだ。
この動画は、「なぜ男性の乳首はOKで、なぜ女性の乳首はダメなのか」という論争も呼び、瞬く間に広がっていった。話題になったことにより、男女問わず多くの人が、実際にこの映像から乳がんのチェック方法を学ぶことができた。表現の規制を逆に活用した秀逸なアイデアと言える。
以上、「Health & Wellness Lions」部門を中心に3つのアイデアを紹介した。健康問題は、先進国の中でも一足先に高齢化社会に足を踏み入れる日本において、重要なテーマだ。3つのアイデアのように、暮らしの質を高める取り組みが求められている。
次回は、話題の人口知能「AI」をテーマにカンヌの事例を紹介していきたい。