
FUTURUS編集部がお届けするカンヌレポート。
第2弾のテーマは「人工知能(AI)」。
「AI」がやがて人類に大きな恩恵をもたらすことは間違いないだろうと言われている。実際、すでに、自動運転や製造業における生産管理など、様々な分野で実用化が始まっている。
一方で、人間を超えた知能を持ったAIが誕生し、やがて人類に害をもたらすのではないかという『シンギュラリティ(技術的特異点)』にまつわる議論など、負の側面も危惧されている。
AIがもたらすのは創造か、破壊か
全世界から43,000件を超えるアイデアが集まるカンヌ広告祭(Cannes lions International festival of creativity)においても、AIを活用したクリエイティブな事例が数多く見られた。
AIが、クリエイティブな分野で活用された事例を紹介したい。
AIが創造するまだ誰も知らない新作
オランダ発祥の総合金融機関であるINGが、ヨーロッパ美術史を代表する光の画家・レンブラントの“新作”をAIが生み出した事例「The Next Rembrandt」。
レンブラントの作品346枚の絵を全てAIが解析し、そこから学習した作風や筆のタッチ、構造などのデータをもとに、レンブランドが生きていれば次に描くであろう新作を現代に誕生させた。
もう見ることのできないはずだった新作をAIの力で再現するという取り組みだ。この試みによってINGは、自社の「革新的な企業理念」を表現している。
AIが足りない才能を補う共生関係
次の事例は「JUKEDECK ARTIFICIALLY INTELLIGENT MUSIC COMPOSER」。AIを利用してオリジナルの楽曲を作成できるオンラインサービスだ。
従来から音楽自動作曲サービスはあったが、AIを活用すれば、音楽に詳しくなくともカテゴリーや曲調、曲の長さを指定すると、誰にでも高いクオリティの著作権フリーの楽曲が作成できる。
YouTubeには毎分数百時間分の動画がアップロードされていると言われているが、個人が様々なコンテンツを生み出す現代において、足りない才能はAIが補うという、人工知能と人間の共生を示す事例かもしれない。
すでに訪れていた人類の敗北
最後に紹介する事例はGoogle DeepMindによって開発されたコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」だ。これは、世界中でニュースになったので、ご存知の読者も多いだろう。
チェスや将棋などの知能ゲームをめぐるAIと人類の対決は頻繁に行われており、科学者やプレーヤーを魅了してきた。チェスでは1997年に当時の世界チャンピオンロシアのガリ・カスパロフ氏が、IBMが開発したコンピューター「ディープブルー」に敗北を喫しており、将棋の世界では、日本将棋連盟会長も務めた故米長邦雄永世棋聖が引退後の2012年、将棋ソフト「ボンクラーズ」に敗北している。
チェスや将棋よりも盤面が広く、可能な打ち手の数が膨大な囲碁の世界では、AIが人類を下すのは、10年は先だと言われてきた。しかし、その予想を覆したのが、DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo」だ。
AIの開発はまだまだ発展途上ではあるが、その成長スピードは年々加速し、人類の予測を上回り続けている。冒頭のシンギュラリティを迎えるのは、2020年半ばだと言われている。果たして、進化を続けるAIは、人類にとって、どんな存在になっていくのか。
人工知能によってもたらされるイノベーションは人類を幸福に導くものであり、決して破滅をもたらすものではないことを信じてやまない。