
アメリカ・テキサス州ダラスで発生した乱射事件。警察官5人が殺害されるという惨事になってしまったが、その結末も衝撃的だった。
これ以上の銃撃戦は危険と判断した警察が、遠隔操作のロボットを犯人の近くで自爆させたのだ。
この手段には、市民の間でも賛否両論あるようだ。ロボットとはいえ、「自爆攻撃」は非人間的であるという声も聞こえる。だが警察が自爆ロボットを投入した理由は、「犯人の持っている銃がより高性能だったから」である。銃社会アメリカでは、しばしばこういう事態が発生することを忘れてはいけない。
犯人が強力な武器を持っている以上、ロボットを制圧手段をして採用しようという発想も当然ながら出てくる。
ドイツ軍が開発していた自爆兵器
実はこうした「遠隔操作による爆弾攻撃」は、70年前から存在する。
第二次世界大戦中、ドイツ軍は『ゴリアテ』という有線式遠隔操作車両を戦場に投入していた。これは最大100kgの爆薬を搭載した兵器で、用途はもちろん敵兵士の爆殺だ。
ゴリアテはノルマンディーやポーランドで多数が使用されたが、大きな弱点がいくつかあった。まず、有線式故にケーブルを切断されると動かなくなってしまうこと。そして走破性が良好とはいえず、最大速力は10kmを下回った。さらに整備にも手間のかかる代物だった。
生産コストも安いとは言えず、結局ゴリアテは兵器としてほとんど役に立たなかった。
犯人制圧に爆弾処理ロボットを利用
だがそれは、当時の技術的限界に起因する失敗である。ゴリアテが70年前に示した「兵器としての可能性」は、現代になって芽を出している。
ダラスの乱射事件で警察が用いたロボットは、発表によると『Remotec F-5』であるという。これは本来、爆弾処理を主目的とするロボットである。
Remotec F-5に関する動画を探してみたが、いかんせん鮮明なものがほとんどなかった。だが後継機のRemotec F-6の動画があるので、ご覧いただきたい。
犯人爆殺の際は、このロボットアームに爆弾を取り付けたという。もちろんこのロボットは、ゴリアテのような有線式ではない。犯人にこれを阻止する手段はなかったと思われる。
蘇ったゴリアテ
近代戦は、ハイテクとローテクが混在する場だ。
第二次世界大戦が集結してからの70年間、戦争はよりコンパクトになった。ミサイルと戦闘機が飛び交うフォークランド紛争という出来事もあったが、現在行われている戦争は主に「市街地での銃撃戦」だ。
しかもそれは、突発的に発生する。もはや「戦争」という単語自体が時代遅れかもしれない。謎に包まれた過激派勢力が、予告もなしにいきなり市街地を戦場にしてしまう。
その状況下で、かつて「使えない兵器」と烙印を押されたゴリアテのDNAが復活した。テロリストにロボットで対抗する近未来である。
我々の住む世界は、どこへ向かうのだろうか。
【動画】