
不老不死は無理だとしても、生きている間は若くありたい。
これは多くの人の願望だろう。
個人差はあるが、中年と呼ばれるような年齢にさしかかった辺りから、体に劣化が生じ始めることを自覚せざるを得なくなる。
それは残業や徹夜からの回復力が低下したことで自覚するかもしれないし、眼精疲労や食欲不振、肌の衰えなどで感じるかもしれない。
それで元気がでる栄養ドリンク類も売れるのだろうが、その効果は一時的だ。
そもそも老化を抑える、もっと欲を言えば、若返ることができる夢のサプリがあれば、どれだけ多くの人が飛びつくだろうか。
もしかすると、そんなサプリが実現するかもしれない。
動物実験では効果が出ているNMN
7月11日、慶應義塾大学はワシントン大学と共同で、ニコチンアミド・モノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、以下NMN)を、人に投与する臨床試験を開始することを発表した。これは世界で初めての試みで、投与されるNMNとは、なんと老化を抑制する物質なのだという。
NMMはマウスを使った実験では、老化に伴う症状が抑えられるという効果を確認できている。
マウスにNMNを投与すると、さまざまな臓器のニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(Nicotinamide Adenine Dinucleotide、以下NAD)という物質が増加することが分かった。このNADが増加すると、加齢によって起きる病気が抑えられることが分かったのだ。血糖値の上昇も抑えられ、血管の劣化や臓器の衰えも抑えてくれる。しかも神経などの一部の器官では、若返りまで確認できたという。
NADはサーチュインという長寿に関係する遺伝子を活性化させることも分かっている。また、糖尿病の治療にも効果が示されたのだ。このNADは人の体内でも作られている。さまざまな臓器で作られたNMNが補酵素に変化したものがNADだ。
NADは加齢と共に減少することにより、目の代謝機能低下や糖尿病を引き起こす原因になることが分かっていた。
老化を抑える夢のサプリメント
しかし、人体ではNMNがどのように吸収されてNADに変換されるのかが分かっていないのだ。
そこで研究チームは、40~60歳の健康な男性10人を対象に、NMNがどのように体内に吸収されてNADに変化するかを調べる臨床試験を開始することにした。
カプセルに入れたNMNを服用してもらい、生理学的検査や血液検査を行うのだ。
この臨床試験で、NMNが人に対しても安全で、老化予防や若返り、病気の予防や治療などに役立つことが分かれば、ゆくゆくは老化で減少するNMNを補うサプリメントの開発への道も開けると考えられている。
そんな老化防止のサプリメントができれば、それはそれで大きなマーケットだが、老化に伴う病気の発生が減少すれば、医療費の削減にもつながるだろう。
近い将来、栄養ドリンクを飲むよりも、老化防止のサプリメントを飲むことが主流になるかもしれない。
【参考】
※ 世界初 老化制御因子NMNの臨床研究を開始:プレスリリース:[慶應義塾]
※ プレスリリース