
農業は害虫との戦いだ。
しかし害虫駆除はそう簡単ではない。むやみに強力な農薬を散布して作物を農薬漬けにするわけにはいかないし、なにより多くの害虫は昼間は葉の陰に隠れて身を潜めているのだ。
しかし、昼間働いている農家の人たちが、夜も害虫駆除のために働くことは難しい。
ただでさえ、キツイというイメージがある農業に人材を集めにくくしてしまうだろう。
そこで、登場したのが『アグリドローン』だ。
『アグリドローン』なら、夜の間に害虫を駆除しておいてくれるのだ。
夜の農業革命を担うドローン
佐賀大学農学部、佐賀県農林水産部、株式会社オプティムの3者は連携して、夜間にドローンを飛行させて害虫を駆除する実証実験に世界で初めて成功した。
しかも、この『アグリドローン』は農薬を使わずに害虫を駆除する。
仕組みとしては、夜間に田畑の上空をGPSによって設定されたルートで自動飛行し、ぶら下げた殺虫機を使って害虫を駆除するというものだ。
このときドローンにぶら下げられている殺虫機は、光で虫をおびき出して高電圧で「ジュッ」と殺虫するアレだ。
これまで夜間に活動する害虫の駆除は、無理とされてきた。しかし『アグリドローン』を利用すれば、人手をかけずに自動で害虫駆除を行うことを可能にするため、「夜の農業革命」になるのだという。

実験で駆除できた害虫は、僅か3分間の飛行だったが、甲虫、ガ、ユスリカ、ウンカなど約50匹に上った。
とくにウンカ類は、昼間は葉の陰に隠れ農薬への抵抗力も高いため、今回の方法による駆除は効果的となる。
農業を最先端で収益性の高い産業へ
この『アグリドローン』は、夜間の害虫駆除以外にも活躍できる。
昼間畑の上空を飛行させ、カメラ撮影して画像をクラウド上の人工知能(AI)で解析することで、病害虫が発生している場所を特定できる。

するとドローンがその場所をめがけてピンポイントで農薬を散布することができるのだ。
この方法であれば、農薬を全面散布するよりも農薬の使用量が減らせる。

ただ、まだこの方法はまだ実験段階であり、さらなる実験を重ねて農作物の種類毎に効果的な働きをするように精度を高めていくという。
また、田を近赤外光で撮影することで稲の温度分布によって稲の密集具合を把握し、散布する肥料の量を調整することもできるようになる。
このように、『アグリドローン』は、ITによって農家の収益を高める試みだ。
後継者不足で悩む農家を、最先端のテクノロジー産業にし、収益性も高めることで、若い人材が集まる夢のある産業に変えていけるかもしれない。
【参考】
※ 佐賀大学農学部、佐賀県農林水産部、オプティム、殺虫機能搭載ドローンを活用し、夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に世界で初めて成功 – OPTiM