MITメディアラボに所属するヒュー・ハー教授は、登山中の事故で両足を失った義足の研究者。
彼が装着しているのは、彼が自ら造り出した生物学とデザイン学が融合したバイオニクス(生体工学)の研究の末開発された「バイオニック義肢」だ。
両足がない彼を、健常者は哀れに思うだろうか?
ヒュー・ハー教授はトークの冒頭でこう語る。「人間の身体は決して壊れるはずがない。壊れているのは技術の方で、技術が不十分だった」と。
つまり彼は障害を背負っているのではなく、彼をサポートするはずの社会や技術が障害となっているのである。
事故後、ヒュー・ハー教授は、MITメディアラボでエクストリーム・ バイオニクス・センターを設立。生体機械工学や再生機能の観点から、様々な脳や身体の機能障害を修復するための基礎科学の研究を推進していった。
肉体だけでなく、感情すら再現するバイオニクスの世界
トークでは、彼が装着しているバイオニック義肢がいかに生まれたか、その技術をつぶさに紹介。
筋肉の動きや皮膚の硬さにいたるまで、足のパーツをイチから徹底的に再現した機能を搭載し、さらにそこに無いはずの足を「動かそう」と思う脳波を拾って動かせるのだ。
その自然な動きや身体との一体感はこれまでのどの義足とも違い、トークでは「まるで本当の足がついているみたい!」と感激する女性の姿も見ることができる。
そして最後には、2013年に起きたボストンマラソン爆破事件で左脚を失った社交ダンサーのエイドリアン・ハスレット=デービスが、このトークのために、事故後初めてのダンスを披露。
私たちは、人の感情や人間性すらも、テクノロジーに組み込むことができる、その光景を目の当たりにするだろう。
【参考・動画】