
太陽光発電や風力発電、そして水力発電はいずれも場所や設置費用の制約が大きい。
それを解決する方法の一つの試みとして、環境負荷を少なく低コストで簡単に設置できる水力発電の実証実験が行われていた。
ずばり、用水路の水流を利用して発電しようという試みだ。
大がかりな工事を行わなくても設置できる
実験が行われたのは福島県須賀川市守屋の新安積疏水の用水路においてだ。

実験に使われた発電装置を開発したのは自動車部品のベアリングの製造・販売で大手のNTN株式会社。
同社が開発した小水力発電装置『NTNマイクロ水車』を、用水路に設置して環境負荷や発電能力をテストした。
『NTNマイクロ水車』の最大の特徴は、大がかりな工事を行わなくても、農業用水や工業用水、飲料水などの為に設置された水路に簡単に設置できることだ。
一般的に水力発電というと、水位の落差を利用したものになるため大がかりな工事が必要になり、環境も激変してしまう。
しかし、『NTNマイクロ水車』は、今ある水路の流れをそのまま利用するため、簡単に設置できるわけだ。
水流を効率良く電気に変える
『NTNマイクロ水車』が水流を捉えるのは5枚の羽で構成されたスクリューで、回転した際に描く円の直径が60センチ、90センチ、120センチの3種類がある。

水流からできるだけ無駄なくエネルギーを取り出すために、羽の先端部分を広くして厚みも持たせるなどの工夫がされている。
このスクリューを水路の流れに浸すだけで発電ができるため、設置は非常に簡単になる。
また、水流への抵抗を少なくする角度を付けることで、同じ水路に複数並べて設置しても、相互の干渉は少なく、設置するほど発電力が高めることができる。
電力の地産地消で地域の発展に
実験では水路の100メートルにわたって最大10台の水車を設置した。
その結果、水流の流速が毎秒2メートルになったときは、1台あたり1kWの発電に成功している。
これは1日に換算すると1台で24kW/hの発電ができたことになり、一般家庭で使うとすれば2世帯分の電力を賄えることになるという。
重要な事は、この電力を得るに辺り、水路や農地は全く損傷していないということだ。
同社は『NTNマイクロ水車』が低炭素化社会に寄与できることを期待しているといい、発電した電力は蓄電して何かの動力に利用しても良いし売ってもいいとしている。
また、自然資源を有効活用しながら地域の発展に役立てられることも期待している。
小さな発電機だが、簡単に電力の地産地消を実現できるというのは、なかなか魅力的だではないだろうか。
なお、発売は2016年12月を目指している。
【参考】