
日本は、世界的に見てもスノースポーツが栄えやすい場所でもある。
たとえばシベリア内陸部やモンゴルなどに行けば、日本よりも寒い地域はいくらでもある。だが、それらはいずれも乾燥している。雪とは雨の延長線上だから、乾いていると雪もあまり降らない。
日本は寒冷な空気と水分を兼ね備えた、世界でも珍しい気象条件を持つ国なのだ。だからこそ冬になると、世界各地からスキー客を集める。日本の良質な雪を求める人々だ。
そして今年、もしかしたら日本のスキー場に「光景の変化」が訪れるかもしれない。
ゲレンデで華麗なジャンプを
フランスの企業が開発し、クラウドファンディングサイトにも出展した『Wingjump』というスキー用品がある。
これはまさに名前通りの製品で、スキーヤーはこの翼を装着してゲレンデを舞うことができる。
プロにしかできない大胆なジャンプも、このWingjumpを身につけることで誰でもできるようになる。本当に空を飛ぶわけではないが、スキーのアクションに新しい可能性を付与することは間違いない。
帆船と同じ原理
Wingjumpの構造は、飛行機の翼と同じである。あるいは帆船の帆でもいい。
帆船は逆風の下にあっても前進できる。帆を船首の向きに対して平行にし、前からの風を使って帆を膨らませる。すると船はその膨らみに釣られるように、斜め前方に移動する。
Wingjumpの場合は、スキーヤーを上へ持ち上げる揚力を発生させる。そのため大きなジャンプが可能になるということだ。
事故をいかに防ぐか
こうした新製品の登場により、新しい種目が誕生する可能性ももちろんある。
だがそれには、「安全対策の見直し」も同時に重要になってくる。
バックカントリースキーは近年普及してきたものだが、立ち入り禁止区域に入ってしまったための事故も発生している。新しい種目をスキー場が受け入れる際、「どのように指導したら事故を防げるか」ということを議論しなければならない。
Wingjumpが日本のスキー場にどのような効果をもたらすのかは、まだ未知数だ。しかしいずれにせよ、用具使用の規範整備が必ず求められるだろう。その際の対応の仕方で、事故の発生率も変わってくる。
どんな製品でも、それを使うのは人間である。そのことを忘れてはいけない。
【参考・動画】