来る東京オリンピック狙い?
「CEATEC JAPAN 2016」会場でNECのブースに行くと、同社はセキュリティー技術を中心に展示していた。
ブースのテーマは「NEC the WISE」と銘打ち、人と人工知能の協調をブランドとして打ち出していた。
同社のブースでは、ウォークスルー顔認証や複数のカメラにより不審者を見つけ出すシステムなど、東京オリンピックでのニーズを想定したと思われる技術の展示に力が入れられていた。
歩いているだけで認証手続きが終わる
NECのブースで最も人々が注目していたのは『ウォークスルー顔認証システム』だった。
このシステムは既にリオオリンピックに設置された「Tokyo 2020 Japan House」で実際に運用されており、今回のCEATEC JAPAN 2016では実体験コーナーが設置されていた。
『ウォークスルー顔認証システム』は最初に一度だけ顔とIDカードを紐づける登録手続きが必要だが、わずか10数秒しかかからない。
そしていちどこの手続きを済ませておけば、あとはいちいちIDカードを取り出さなくても、システムの前を通り過ぎるだけで良い。
大丈夫なのか? と思えるシステムだが、誤認識は10万人に一人だというから、実用性に問題はなさそうだ。
この技術を使えば、認証が必要な施設への入場でも足を止める必要がなくなるため、認証手続きによる渋滞が緩和されるだろう。
不審人物を見つけ出すウェアラブルカメラ
ブース内に警備員がいる? と思ったら『ランニングポリス』という製品のデモを行っているスタッフだった。
『ランニングポリス』はベスト型のウェアラブルカメラで、肩にに近い辺りにカメラが装着されている。
このカメラは常に周囲を撮影し、警備員の第3の目として、要注意人物がいないかどうかをチェックしているのだ。
撮影された映像は、例えば警備本部などに設置された常時解析センターに転送され、顔認識システムによって解析される。
もし、要注意人物を検出したら、すぐに現場の警備員のスマートウォッチに通知される。
このシステムでは特に、映像の圧縮率を高める技術や映像の乱れを抑制する技術、そしてサーバー側では逆光や暗がりでも顔の輪郭や色が補正されて視認性を高める技術が強調されていた。
『ランニングポリス』もまた、東京オリンピックで活躍しそうな技術だ。
異なる場所への出現パターンで不審者を検出
『ランニングポリス』は警備員などが移動しながら怪しい人物を検出する仕組みだが、複数の固定型防犯カメラから不審人物を検出するシステムも展示されていた。
要注意人物を防犯カメラの映像から検出する技術は他にもあるが、NECのシステムの特徴は、複数のカメラが捉えた同一人物の異なる場所への出現パターンから不審者を検出することができるということだ。
また、既存の技術では、膨大な映像から同一人物を特定するには時間がかかったが、独自のツリー構造による人物のグループ化により、照合時間を劇的に短縮できたことだという。
ブースでは、システムが映像から素早く人物を解析している様子が映し出されていた。
人工知能で未知のサイバー攻撃を防ぐ
そして最後に、AIにより未知のサイバー攻撃を自動検知する『自己学習型システム異常検知技術』について紹介したい。
これはAIが平常の組織内の通信状態やアプリケーションの使用状況を学習することで、異常な状態を自動的に検知するという技術だ。
この技術を使えば、人が監視するよりも10分の1以下の時間で被害を特定できるという。
また、この技術では登録された既知の攻撃手法ではなく、平常から異常への変化でサイバー攻撃を検知するので、全く新しい未知の攻撃も検出することができる。
この先進性が評価されて、今回の「CEATEC JAPAN 2016」では、この技術が「CEATEC AWARD2016」の「街と社会でつながるイノベーション部門」においてグランプリを受賞した。
以上のように、NECのブースは、来る東京オリンピック・パラリンピックでの活用が期待される技術で注目されていた。
※写真撮影:筆者
【関連記事】
※ CEATEC JAPAN 2016レポート:日立の『EMIEW3』と『ROPITS』
※ CEATEC JAPAN 2016レポート:トヨタの『KIROBO mini』が大盛況