
自動車が現代社会にもたらした負の遺産を敢えて挙げるならば、まずは渋滞だろう。
その大きさ故、自動車は道路を詰まらせてしまうという欠点がある。たとえば「世界一渋滞が深刻な都市」と言われているインドネシアの首都ジャカルタでは、ラッシュ時にタクシーに乗ることは下策である。数キロ先の目的地にすら、1時間以上もかける羽目になる。これがまさにモータリゼーションの弊害である。
その上、たかが「数キロ先」まで行くのに自動車は科学効率としても非合理的だ。東京から横浜まで旅客機で行こうとは、誰も考えないだろう。それと同じようなものである。
キックボードで爆走!
だから、こんな製品が続々生み出されている。
『Indiegogo』に登場した『Eon Scooter』は、渋滞を回避できる新型モビリティーだ。キックボードにモーターを取り付けたもの、と書けば非常に単純なものに見えてしまうが、そのスペックは驚異的である。
用意されたバージョンのひとつである『Pro』は、最高時速25マイルを誇る。元来保守的なアメリカという国は、今でもヤード・ポンド法を使うからこの表記はあまりピンとこないかもしれない。だが時速40キロと言えば、日本人の誰しもが驚くだろう。
原付並みのスピードで走るキックボードとは、なかなか想像がしづらい。もし事故に巻き込まれたら身体が無事では済まないだろうということは何となく分かるが、ともかくこのEon Scooterは巨額の資金をIndiegogoで調達している。
身の丈に合った移動距離
この製品は満充電状態で25マイルの移動ができるという。そして充電にかかる時間は4時間。だが専用の急速充電装置を使えば、2時間で満充電に達するそうだ。
これはかなり効率的ではないか。25マイル、すなわち40キロの距離を走るだけのスタミナがあれば、「ちょっとした用事」に充分対応できるはずだ。先ほども書いた通り、ひとりで数キロ向こうのショッピングセンターへ行くのに自動車は大きすぎる。
Eon Scooterは、現代人の身の丈に合った発明と言えるかもしれない。
新型モビリティーのゆくえ
この製品が日本の公道で走れるか否かは、とりあえず置いておこう。そうした問題については、経済産業省も頭を悩ませている最中だ。
現行の規制がどうあれ、こうした新型モビリティーの開発は誰に求められない。発明とは、人々の潜在需要が形になったものだ。我が国の政府がどういう方針を打ち出そうと、Eon Scooterに続く製品はこれからも登場するはずだ。
こうした角度から、現代人を悩ます渋滞問題が解決するというシナリオも充分にあり得る。
【参考・動画】
※ EON Scooter | The Most Powerful Electric Scooter – YouTube