
最近、ネット上だけでなく、街のあちらこちらでも、やたらとこちらの気になる広告が表示されるなぁ。
なんだか自分の行動を見透かされているようだ……。
──そんなふうに感じさせる広告の仕掛けが登場した。
電通、クラウディアン、スマートインサイト、Quanta Cloud Technology Japanの4社が共同で発表したのは、人工知能を活用したデジタルサイネージ(屋外広告)の実証実験の成功だ。
走行中の車の運転手が目にする屋外設置型の大型デジタルサイネージに、走行中の車種の属性に相応しい広告が表示される技術だという。
走行中の車種に相応しい広告を表示する
この実証実験では、実は走行中の車をビデオカメラが撮影しており、その映像から人工知能が車種を判別している。
そして判別された車種の持ち主に相応しい広告をデジタルサイネージで表示させるというものだ。

実験は9月10日と17日に、六本木のビルの屋上に設置されたデジタルサイネージで行われた。
ここに表示される広告を目にするであろう首都高速道路上の走行車両がターゲットだ。
人工知能は、300種以上の車種を識別できた。メーカーや年式をリアルタイムで識別したのだ。その間わずか0.5秒。
するとそれまで天気予報などの一般的なコンテンツを表示していたディスプレイに、瞬時にして車種に相応しい広告が表示された。
たとえば高級車なら富裕層をターゲットにした広告を表示し、ファミリーカーなら家庭向けの広告を表示するといった具合だ。
ディープラーニングで画像から車種を年式まで識別する
実験で使われた人工知能には、1車種について約5000枚もの画像をディープラーニングさせているという。それを300車種以上行っている。
その結果、メーカーと車種、そして年式を1秒以内に識別できることが実証され、広告のターゲティングを行えることも確認できた。

しかしこの実験まだ序の口だった。というのも、この段階では車種に属性を紐付けしているだけなので、ターゲティングとしては粗すぎるのだ。
そこで次に考えられているのが、車種からドライバーの属性を引き出そうということだ。
その方法はいろいろと想定されているようだが、たとえば駐車場で得られた情報で、車種とドライバーを紐づけることなどが考えられているらしい。
何やら追跡されているようで少々気味が悪い。
人工知能に追跡される時代へ
今回の実験によって、これまで屋外のデジタルサイネージでは見ている人の属性に合わせた広告を出せなかったという課題への解決の糸口がつかめてきたといえる。
この手法がさらに洗練されれば、応用範囲はビルの屋上や壁だけでなく、ショッピングモールやアウトレットといった商業施設の駐車場で使うこともできる。
そうすれば、もともと買い物にきたターゲットの購買意欲をさらに高めることができるかもしれない。
ほかにも、瞬時で走行中の車種を識別できる技術は、より詳細な交通情報を計測することにも使えるだろう。
こうして、我々の行動が人工知能に把握されていくのだろうか。
【参考】
※ クラウディアンなど、AIを活用しカメラ映像から走行車種を認識しターゲット広告を配信へ~六本木の屋外ビルボードにおける実証実験に成功~ – @Press