
使い終えたら捨てるウェアラブル?
健康状態を計測するウェアラブルが多く登場してきたが、いずれも長く使い続けることが前提の製品だ。そのため、毎日の充電やメンテナンスが必要になる。
しかし、医療の現場や介護の現場で使うのであれば、衛生上や邪魔にならないこと、さらにメンテナンスの手間が必要ないタイプのウェアラブルが望ましいだろう。
そこで使い捨ての絆創膏(ばんそうこう)のようなウェアラブルが開発されている。
使い捨てにできるウェアラブルデバイス
11月24日、大阪府立大学大学院工学研究科の竹井邦晴助教らの研究グループが、絆創膏のように体に貼って使い捨てにできるウェアラブルデバイスの試作品を開発したことを発表した。

このウェアラブルデバイスでは、活動量や心拍、体温、紫外線量などを計測して健康状態をチェックできるという。
しかも低コストで製造できるため、一部を除いて使い捨てにできる可能性が出てきた。センサーなどの電子部品を、薄いフィルムに印刷して製造できるためだ。
試作品は長さが10cm、幅3cm、厚さは最も厚みがある部分で1mmである。ただし、まだ無線通信するための回路やバッテリーについては開発中だという。
それでも、一部のコストが高い部品以外は使い捨てにできるようになるという。
使い捨てにするというのは、直接皮膚に貼るタイプであるため、衛生面を考慮しているためだ。
各種センサーをフィルムに印刷する技術
研究チームは、このウェアラブルデバイスを作成するために、材料を削ったり重ねたりする方法を採らなかった。
ナノ粒子やカーボンナノチューブなどを溶液に混ぜたインクを使って、薄いプラスチックフィルムに印刷する方法を選んだのだ。

この印刷技術により、活動計(加速度)センサーや高感度温度センサー、心電センサー、紫外線センサーを印刷で形成できるようにした。
特に加速度センサーをフィルム上に印刷する技術は世界でも初めてだという。
この印刷による製造方法により、各種センサーの集積化とコストダウンが実現可能となる。
医療や介護の負担を削減することが期待される
ただ、前述のように、まだ無線通信の回路とバッテリーが開発途中であるため、現在のところ外部装置と有線でつなぐ必要がある。
この無線化とバッテリー内蔵化が実用化のための課題となっている。
そして実用化されれば、医療現場や介護現場での医師や看護師、介護士たちの負担を軽減できるデバイスになるだろうと期待されている。
そうなれば、患者の健康管理や高齢者の孤独死防止などに役立つことも期待できる。
竹井邦晴助教によれば、将来は使い捨てにできる部分を1枚100円以下で製造することができるだろうとのことだ。
無線化とバッテリー内蔵化の課題が早期に解決されることが望まれる。
【参考】