
若者の血が売買される時代がくる。
運動やサプリメント、あるいは化粧や怪しげな健康グッズなど、さまざまな方法で若さを維持しようとしたり、若返ろうとすることに多くの人がすがり付く。
まだ若い人にはわからないかもしれない。それが若さというものだから。
しかし、中年を過ぎた辺りから、多くの人が加齢とともに衰えていく体力や知力、あるいは体型の変化に気付いたとき、ああ、若かった頃にもどれないだろうか、と思うものなのだ。
ホラー映画やオカルト映画であれば、若い女性の血をすすって永久の命を得る――などというシーンも登場する。
しかし、このシーン。全くのでたらめだとも言えなくなってきた。
若い血が、若返りに効果があるという研究結果が発表されたためだ。
マウスに人間の血漿を投与するという実験
その実験は、マウスで行われた。しかし、衝撃的なことに、使われたのは人の血だった。
老いたマウスに、人間の10代の若者から採取した血漿を投与したところ、そのマウスが若返ったというのだ。
実験結果を発表したのはAlkahest社の研究チームだ。同社は認知機能障害の治療法を開発している。
研究チームの発表によれば、18歳の人間の血液から赤血球などの細胞成分を取り除いた液体である血漿を投与された生後12ヶ月のマウスが、まるで生後3ヶ月のマウスのような記憶力と行動力を取り戻したという。
生後12ヶ月のマウスは、人間では50歳ほどに相当する。
この結果は、人にも応用できるのではないか?
老化したマウスを若返らせた若者の血漿
血漿を投与される前のマウスは、年相応に老いていた。活発に動き回ることをしなくなり、記憶力も衰えていた。
研究チームは、この老いたマウスに18歳の人の血漿を週に2回注射することを3週間続けた。
すると生後12ヶ月の老いたマウスが、生後3ヶ月のマウス並に動き回るようになり、記憶力もめざましく向上したことを示した。
そこで研究チームがマウスの脳を調べたところ、血漿を投与したマウスでは脳の海馬で多くの新しい細胞が発生したことがわかった。
この現象には、若い血液がニューロン新生を促した可能性があるという。
まだまだ研究が必要だが…
研究者によれば、これまでにも人間同士の輸血で、若い人から輸血された人に何かしらの恩恵があったという実例があるという。
したがって、今回の結果を人間に当てはめれば、認知症が始まったばかりの患者に効果があるのではないかと考えているようだ。
とはいえ、Alkahest社ではまだ血漿のどの成分が若返り効果をもたらしているのか、あるいは実際に人に応用するにはどのような治療方法が適しているのかなど、まだまだ研究を進める必要があるとしている。
しかし、そのような研究を待たずにビジネスが先行して始まろうとしていた。
フライングする輸血ビジネス
Alkahest社は認知症の治療を目的として研究を進めているが、ずばり「若返り」をビジネスにしようという動きは始まっている。
なにしろ「若返り」には、膨大な需要が見込めることは誰にでもわかることだ。
米カリフォルニア州に、Ambrosia社というスタートアップがある。
ここが35歳以上の人を対象に、8000ドル(約80万円)支払えば若者の血液を輸血するというプログラムを計画しているのだ。
プログラムでは、8000ドル支払った35歳以上の人に、16~25歳の若者の血液を、週に1回を4週間輸血するというのだ。
一応、これは臨床試験への参加者募集という触れ込みのようだが、どうしても新手の輸血ビジネスに思えてしまう。
なぜなら、同社からは調査データが開示されていないことや、試験なら存在するはずのプラセボを試す対照グループが存在していないからだ。
しかしマウスの実験などから、若者の血液が若返りに効果があるであろうことはどうやら事実に思える。
そうなると、これから若者の血液が、高額で売買される時代がやってくることは、想像に難くない。
【参考】
※ Blood from human teens rejuvenates body and brains of old mice – New Scientist
※ Alkahest reveals blood from human teens has anti-aging effects in old mice – Daily Mail Online