
世界がインターネットで繋がるようになってから、まだ20年程度しか経っていない。
しかしその20年の間に、情報技術にまつわる様々な問題が噴出した。その最たるものは個人情報の漏洩問題だろう。人類は1枚の写真から、あらゆる情報が読み取れるということを骨の髄まで学習した。
顔、年齢、住所、その日のスケジュール、そして瞳の虹彩や指紋まで、犯罪者の手元に届いてしまうという。
「ピースサイン」はダメ絶対!?
1月9日付けの産経ニュースの記事が、ネットユーザーの間で大きな話題となった。
写真を撮影する際、ピースサインは非常に危険な行為だという。
「カメラに何げなくピースのサインをするだけで、指紋が出回ってしまう」。指紋の盗撮防止技術を開発した国立情報学研究所の越前功教授は、こう警鐘を鳴らす。(中略)国立情報学研究所の実験では3メートルの距離で撮影した画像でも読み取れることが判明しており、「自撮り」のピース写真をネットに掲示すると、簡単に盗まれてしまう。(産経ニュース2017年1月9日の記事より引用)
つまり、掌の生体情報がSNSに投稿された写真などから特定されてしまうというのだ。
「有名人の指紋」を一般人が知る場面といえば、幕内力士が色紙に押す手形くらいしかなかったはずだが、今やその人物の写真1枚あれば指紋まで判明してしまう。スマートフォンに搭載のカメラは日進月歩の勢いで高性能化しているが、その弊害が今になって現れたのだ。
「街角の写真」を掲載できなくなった!
だがこうしたことは、今に始まったことでもない。
webライターである筆者の経験から言うと、ここ1、2年で「街角の何気ない景色」を写した写真が掲載しづらくなっているというのがある。
たとえば、日本平スタジアムで清水エスパルスの応援をしているサポーターの写真などは、今やひとりひとりの顔にモザイクを入れなければなかなか掲載してもらえない。デスクがOKサインを出さないのだ。もちろんこれは、プライバシーの問題からである。
もっとも、そのサポータークラブの了承を取れば別かもしれないが、これが「朝の通勤電車に乗る人々」とか「渋谷のスクランブル交差点を渡る人々」といったものはなおさら掲載が難しい。その中で誰かの掌が何かしらの形で写り込んでしまった場合、冒頭に挙げた問題が発生してしまう。
カメラの高性能化やネットワークの充実があるからこそ我々は仕事を得ているのだが、同時にそれは「諸刃の剣」となりつつある。
1枚の写真から漏れる個人情報
またこれは強調しておかなければならないが、何かしらの被写体を写真に取ってSNSやブログにアップする以上は「完全匿名」は絶対に成立しない。
背景の様子からその場所の具体的な位置は、簡単に察知されてしまう。たとえ室内でも「その部屋にあるもの」から配信者の身元が判明する場合も少なくない。
今や世界中の誰しもが画像配信者になれる以上、「危害が赤の他人に及ぶかもしれない」という心構えが必要になる。テレビ番組を見ても、出演者ではない通りすがりの一般市民の顔にモザイクを当てるということが多くなっている。
2017年は、こうした「情報漏洩問題」が各所で議論される年になるだろう。
【参考】