
日本は「紙の国」である。
中国で発明された紙という記録媒体は、人類を大きく進化させた。木簡よりも軽量で、パピルスよりも耐久性に優れている。世界の権力者は、大金を投じて紙職人をヘッドハンティングした。そして我々現代人でもすらも、紙とともに暮らしている。
紙がなければ、人類文明は存在し得ないと言っても過言ではない。
紙と日本人
そんな中、日本人は紙に独特の性質を添加した。
ひとことで言えば、「紙にすべての役割を与えよう」ということだ。
日本文化の本質とは、「本流を凌駕する亜流」である。当初はコピー製品を量産する程度だったものが、いつの間にか独自の研究が加えられてオンリーワンの製品にしてしまう。その代表が、和紙だ。
紙を発明した中国人でさえ、それを衣料目的の繊維にしようとは考えなかった。絹や綿があるのに、なぜわざわざ紙を布にしなくてはならないのか? 世界の誰しもがそう思うはずだ。
ところが、和紙というものは紙本来の「記録媒体」という役割から突出した製品だ。極めて強固な耐久性を持ち、あらゆる用途に転用できる。だからこそ、世界の紙幣が紙からプラスチックへ移行する中で日本銀行のみが紙にこだわり続けている。
和紙で服を作る
クラウドファンディングサイト『Makuake』に、このようなキャンペーンが登場した。
紙製の糸で服を作り、それを世界に配信しようというものだ。
発案者は大阪市に本社を置く株式会社ZERO。この企業と提携して製品を作るのは、日本国内の工場である。
衣服の縫製は、今や殆どが海外工場で行われる。パキスタンやバングラディシュにはそうした拠点が多く、当然ながら人件費も非常に安い。だが、敢えてそれを選ばず最高品質を追求していこうという構えが見て取れる。
本当にいいものを、適正価格で売る。これこそが消費者にとっても理想の取引ではないのか。デフレ経済に慣れすぎた現代日本人は、「モノをできるだけ安く買う」ということに凝りている感がある。
巨額プロジェクトに変貌か?
この「和紙の糸で服を作る」プロジェクトは、Makuakeにおいて目標額の86%の資金を集めている。筆者がこの記事を書いている時点で、まだ満額にはなっていない。
では残り期限はあとどのくらいかというと、じつに72日も残している。このままのペースで行けば、あと2カ月あまりでさらなる巨額が集まるはずだ。
日本の伝統技術が、今まさに世界へ飛躍しようとしている。
【参考・動画】