
近年、水素エネルギーが話題になることが多いが、この水素を金属にすることができたという研究が発表された。
つまり、金属水素である。
金属水素の生成は、もしこれが実現すれば、常温での超伝導や飛躍的にエネルギーが高まるロケット燃料、そしてコンピューターの飛躍的な高速化など、さまざまなブレークスルーが生じるとして期待されている。
地球の中心よりも高い圧力で水素を金属化する
金属水素の作成に成功したと発表したのはハーバード大学の研究者らだ。
水素に超高圧をかけることで、水素が金属特有の性質を示したという。
水素は1つの陽子と1つの電子で構成されるシンプルな物質だ。これに超高圧をかけることで、金属水素に変化すると考えられている。
通常の状態であれば水素は絶縁体だ。ところが金属化すると伝導性を持つと考えられている。
研究成果を発表した同大学のIsaac Silvera博士とRanga Dias博士によれば、彼らは水素に495GPa(ギガパスカル)という地球の中心部よりも高い圧力をかけることで、水素を金属化したという。
金属水素は常温・常圧でも金属のままか
この研究に期待されているのは、一端金属化した水素が、圧力から解放されても金属であることを維持できるかどうかだ。
もし金属状態を維持できれば、常温・常圧下での超伝導物質になるかもしれないからだ。
そのため、同大学の研究チームは、実験段階では低温で圧力をかけ続けている状態から、慎重に解放しようとしている。
それは本当に金属水素なのか?
しかし今回の研究結果に懐疑的な意見も出ている。
たとえば、ワシントンDCのカーネギー科学研究所(Carnegie Institution for Science)の地球物理学者であるAlexander Goncharov氏は、研究者らが確認したという金属光沢は、圧力をかける際に使ったダイヤモンドアンビルセルという器具のダイヤモンドの先端を覆っていた酸化アルミニウムだった可能性があるとしている。
そのため、金属水素ができたということに懐疑的だ。
科学技術に飛躍をもたらす金属水素
このように、非常に大きなエネルギーを投じて作成される金属水素は、再び水素分子に戻る際には膨大なエネルギーを放出する。
そのため、金属水素はこれまでの常識を覆すロケットエネルギーになるのではないかと期待されている。
また、常温・常圧下での超伝導が維持されれば、リニアモーターカーなどの磁気浮上を採用した移動システムや、コンピューターなどの性能を飛躍的に向上させることができることも期待されている。
同大学が作り出した物質が、果たして正真正銘の金属水素であるのか。世界中の科学者達が注目している。
【参考】
※ Advance in high-pressure physics – Harvard Gazette
※ Doubts Cloud Claims of Metallic Hydrogen – Scientific American