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インド発のロボットベンチャー「GreyOrange」が変える物流の未来

 

 

日本は、少子高齢化による人口減少によって労働者不足が加速化し、社会経済の成長を維持させるために「労働生産性の向上」が求められている。

大きな社会課題に直面する企業は、どのような策を講じているのか。

物流の世界ではロボットが人の代わりになる!?

日本の大手家具企業であるニトリホームロジスティクスは、昨年インドのロボットベンチャー「GreyOrange」の無人搬送ロボット「Butler(バトラー)」の導入を決定。

「Butler」は、物流センターの床面を移動するロボットが可搬式の棚の下に潜り込み、作業者の元に棚ごと商品を届けることで、センター内の省人化を実現する画期的な物流ロボットシステムで、導入効果は従来に比べて出荷効率が4.2倍になったという。

ECコマースの主流化で目まぐるしく変容する物流の未来について、「GreyOrange」のアジア太平洋・日本担当の最高経営責任者(CEO)であるナリン・アドバニ(Nalin Advani)氏にお話を伺った。

 

ロボットは人の仕事を奪わない

「2011年に創業された「GreyOrange」は、次世代型自動搬送ロボットを世界各地の倉庫や物流センターなどに展開しています。今まで荷物のピッキングを行う作業員は、一日約11kmもの距離を倉庫内の移動で余儀なくされていました。

人手不足の中で非常に作業効率が悪く、ヒューマンエラーも起きかねない状況ですが、物流の世界では新しく変えようとする意志も効率化する技術もなく、何十年間もこの環境は変わっていませんでした。

「GreyOrange」は今まで倉庫のモノを人が集めるというシステムを「Goods to Person」、つまりモノが人に集まるという仕組みに変えることを「Butler」で実現しています。」

『人にやさしいロボット』をモットーにしていると語るアドバニ氏は、ロボットは人の雇用をなくすのではなく、生み出すものであるべきだという。

 

「ロボットが人の生活を助けることによってさらに仕事が効率化し、人にしかできない仕事に注力できる環境が生み出されます。物流が自動化できないことで潰れていく会社や、ECコマースなどのオンライン事業をやりたいけれど労働力不足によって手が出せない状況にあるリテーナー(小売)もいます。ロボットで代替できる作業の効率性を高めることで、そのような状況に陥っている企業を救うことで人の雇用をさらに生み出すことができると考えています。」

 

ECの台頭で変容する購買行動

物流の世界と切っても切り離せないのは、急速に拡大するEC市場だ。

経済産業省の調査によると、2017年度の日本国内のEC市場規模は16兆5,054億円で前年比9.1%の伸びで大きく成長。また、BtoCの物販系分野のEC化率も5.79%で市場規模は対前年比7.5%増と拡大している。

Amazonや楽天市場、ZOZOTOWNといったオンラインリテールでの買い物が当たり前となり、オフライン(対面販売)とオンライン(EC)の垣根がなくなっていることで人々の購買行動も大きく変容している。

 

「中国では、毎年11月11日のSingle’s Day(独身の日)に合わせてECサイトで大規模なセールが行われます。昨年は約1兆9000億円にものぼる売上を記録していますが、実は毎年、大量の返品の嵐が起きるのです。人件費や作業工数を考えると並大抵のコスト損失ではないでしょう。今や消費者はECで色やサイズなど自由に好きなものをまず選んで買い、実際に現物が届いてから気に入ったものだけを手元に残して返品するという購買スタイルになっているのです。人の行動の変化に合わせて、企業もシステムを柔軟に変化していく必要があります。」

 

労働生産性の向上という社会課題に対して、今後日本はどう立ち向かっていくのか。

便利な生活の裏側で、ロボットがその未来を切り開いていくのかもしれない。

 

【参考】

経済産業省「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」