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脳科学者・茂木氏が語る、人工知能時代に「人間に必要な能力」とは

テクノロジーの進展が目覚ましい昨今、AIの技術も発展し人間の能力を超えるのではないかという声もあります。人工知能が台頭する中で、人々にはどのような能力が将来的に求められるのでしょうか。

脳科学者である茂木健一郎氏は、「第九回 人工知能時代に必要とされる人間の能力とは何か?」という記事で“4つの能力”が必要であると述べています。今回はそのうち1つの能力に着目し、事例を交えてその能力が意思決定に大きく影響しうる点についてご紹介します。

人工知能時代に人間が果たす役割とは

最近では、人工知能の発達により、将来的に自分の仕事、さらには我々人間の役割が奪われるのではないかという議論が各所でなされています。しかし、人工知能が人間の仕事や役割を全て代替しうるものでしょうか?

多くの人が不安とともに抱くこの問いに対して、茂木氏は記事内で「人工知能がどれほど発達しても、人間の脳が果たすべき役割が消えてしまうわけではない」と結論づけています。というのも、人工知能は現状、データを処理するために膨大なメモリと電力を要するそうで、人間の方が処理する際のエネルギー効率がいいと述べています。

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そのため、それぞれの役割分担が重要で、人工知能がタスクを割り振って人間がタスクを実行すべきだという声もあり、Amazonではそのような仕組みを反映したウェブサービスを実現していると茂木氏は指摘。

人工知能時代における人間が果たす役割に関して、「人工知能や情報ネットワークの存在を前提にして、人間の脳の動作がそこに加わることで付加価値のある情報処理を行う試みは、これからますます重要な意味合いを持ってくるだろう」と語っています。

人工知能時代で人間に求められる能力

人間と人工知能の共存が大事だと述べる茂木氏は、人工知能時代において4つの能力が求められるようになると明かします。なかでも筆者が注目したのは「価値判断を迅速かつ柔軟にする」能力。

人工知能はデータさえ投入すれば合理的に最適解を導いてくれるイメージを持つ人もいるかと思いますが、何をもって最善なのか、つまり“価値判断”を導き出すのは不得意であるがゆえに、人間が自分たちにとって大切である価値は何かについて考えなければならないと茂木氏はいいます。

一方、価値判断の基準を設定するのは容易ではないと筆者は考えます。何が大切なのかは、状況や主体によって異なる場合もあるでしょう。正しい価値基準について、一企業が意思決定を行う際、社員が合意できる合理的基準もあれば、合理的に設定するのが難しく対立が生じる価値基準もあるかと思います。

裁判を例にすれば、検察側と弁護側の対立が挙げられるでしょう。人工知能を裁判に応用すれば書類整理や法的論理の構築をサポートして業務が効率化されるという見解もありますが、すべての事例について一様に同じ法律内容が適用されるわけではないと考えられます。

検察側と弁護側では立場上判決内容で争うケースも多いでしょうし、法律文面の解釈やそのベースとなる価値判断についてもそれぞれ異なるでしょう。AI裁判を可能にしようと考えるならば、判決に関わる司法関係者の多様な価値判断について検討・整理する必要があると思われますが、その価値判断は人によってバラバラの可能性もあります。

このように、「価値判断を迅速かつ柔軟にする」能力は人工知能時代において、さまざまな分野での意思決定の根本に関わるものだと言えるでしょう。筆者は特に柔軟な価値判断が重要だと考えていて、その力を養うためには多様な価値基準について理解しつつ同じ事象について複眼的に価値判断できる経験を重ねることではないでしょうか。そのために、学校教育や企業内でのトレーニングなどのプログラムを今後変更していかなければならないと考えます。

記事内では、人工知能時代において求められる能力について他の3つについても述べられています。ぜひ記事の全容をチェックしてみてください。

【画像・参考】
第九回 人工知能時代に必要とされる人間の能力とは何か? | 茂木健一郎の脳インテリジェンスレポート | WISS
※Willyam Bradberry/Shutterstock