社会問題にもなっている日本のIT業界における人材不足。ZOZOの元広報担当執行役員でもある田端信太郎氏も、Twitterで言及しています。日本は先進国としてIT需要が大きいにもかかわらず、なぜそのような人材不足に陥っていると考えられるでしょうか?
IT人材の供給動向の予測
経済産業省商務情報政策局が発表した『IT人材育成の状況等について』という資料(※1)では、「若年層の人口減少に伴って、2019年をピークにIT関連産業への入職者は退職者を下回り、IT人材は減少に向かうと予想されている。また、IT人材の平均年齢は2030年まで上昇の一途をたどり、高齢化が進展することも予想されている」とのこと。
加えて、「IT需要予測から推計されるIT人材需要との需給ギャップから2030年までのIT人材の不足数を推計すると、労働集約業態となっている日本のIT人材の低生産性を前提とすれば、将来的に40~80万人の規模で不足が生じる懸念があることも試算された」と述べられていました。
また、日本のIT人材のスキルレベルについて「回答者の平均がレベル4を超えている米国やレベル3の後半に達しているインド・中国に対して、日本の平均レベルはレベル3の前半にとどまっている。世界的な規模でみても、我が国のIT人材はレベルアップが必要な状況にあるといえる」という問題も提示されていました。
日本でますます市場が拡大していくIT業界ですが、人材不足の原因として高齢化問題はもちろんのこと、人材の質が海外に比べて低いことは大きな問題ではないでしょうか。様々なIT事業の導入に伴い、企業で必要とされるレベルのスキルを持った人材が育っていない、または存在しないことで、IT業界の人材不足がさらに加速されているように感じられます。
今後は従来のITサービスの需要が減り、クラウド、モビリティ、ソーシャル、ビッグデータ/アナリティクス、さらにはIoT/AIに係るIT投資の伸びが予想されるなかで深刻な問題と言えるでしょう。
強すぎる解雇規制が原因か
10月2日の朝日新聞の報道(※2)によると、IT人材が育たない背景として“「ITゼネコン」と呼ばれる多重下請け構造の問題を指摘する声があがっています”と述べられています。ゼネコン体質とはIT業界でよくみられる現象で、大手企業が獲得した仕事を、下請け会社やその下請け、そのまた下請けへと格安で回されていくことを指しています。
この報道に対して、田端氏がTwitterでコメント。
「なんで、ゼネコン体質になるからって、解雇規制が強すぎて、インハウスでIT人材を抱えられないからだろーが!」と述べ、ゼネコン体質そのものが論点ではなく、日本の解雇規制が強すぎることが問題であると指摘。解雇規制によって人員が削減できず、組織に本当に必要な新しい人材を迎えるための余力を、つくることができなくなっているのではないかと示唆しました。
また、それによってIT人材をインハウスで抱えられず、外部発注が増えることで下請け構造になってしまい、IT人材の不足といわれる事態に陥っていることについて提起しました。
解雇規制を緩和することによって企業が採用に伴って抱えるリスクが減り、新しい人材の採用がスムーズになるというメリットもあります。日々成長し続けるIT業界で、スムーズな人材配置が行える環境作りは問題となっていたスキルの向上にも繋がることでしょう。
今後は政府が必要な人材で組織を固められるように、解雇規制について見直していく必要があるのではないでしょうか?
※@tabbata/Twitter
※1 参考資料(IT人材育成の状況等について)/経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課
※2 私はロボット? IT人材が育たぬ国、背景に「ゼネコン体質」:朝日新聞デジタル
※everything possible/Shutterstock