「教師でもいい生徒でもいい、もしも誰かが思いついたユニークなアイデアがすぐさま授業に反映され、しかも世界中の人たちへインスピレーションとインパクトを与えることができたなら・・・」
そんな風に考えることは決して奇妙なことではない。それは今や世界標準となりつつあると言えるだろう。少なくとも日本以外の国では。
経済発展が著しいインドネシア。ジャカルタ市を含む首都圏人口は2,500万人を超える。その玄関口とも言える国際空港があるタンゲラン地区に、現在巨大な新興都市が建設されようとしている。
BSDと名付けられたその都市は、インドネシアで三本の指に入る大財閥Sinarmas Group(シナルマス・グループ)が総力を挙げて開発する未来都市。そしてその話題に満ちた都市の求心力となるのは、世界最先端のICT教育を取り入れた学校群だ。
Apple社と作られるカリキュラム
Sinarmas World Academy(SWA)はシナルマスの名を冠した同グループのフラッグスクールで、2歳から高校生までが通うインターナショナルスクールだ。多くの子供たちが英語のみならず、インドネシア語や中国語など複数言語を操る。国際バカロレアのIBディプロマ認定校でもあり、PYP(4~11歳)MYP(12~16歳)も近い将来スタートするという。
そしてこの学校の最も注目すべき点は、米Apple社の全面的バックアップで行われるICT教育だ。
現在Apple社は世界中の学校に、同社製品の教育への導入を促進するため、Apple Regional Training Center(ARTC)と呼ばれる拠点を学区ごとに整備することを急いでいる。
そこではApple社公認のApple Distinguished Educators(ADE)が他の教師たちへ新しい授業のあり方を提案し、また技術的にサポート。そしてそれを世界中のARTCと共有し、教師たちのさらなるレベルアップを図っている。
SWAにはインドネシア最大のARTCが置かれ、多くのADEが常駐。教育の現場から得られる様々なデータはApple社やソフト開発チームへフィードバックされ、緊密に連携を取りながら授業内容は随時アップデートされてゆく。
開かれた、全ての人のための教育
また、SWAのユニークな点はそのアカウンタビリティの高さにもある。ADEと教師たちのミーティングは常に公開されるのだ。校舎のフリースペースや図書館など、会議は生徒や保護者たちの目にも留まる場所で開かれる。
決して密室で何かを決めることはしない。議論の過程も公開する。当たり前のことなのだが、学校は生徒や保護者のためにある。彼らを排除した議論はありえない。だから教師以外の参加や発言も自由だ。
時に生徒が会議で授業の改善点や新しいアイデアをプレゼンすることもあるという。例えそれがSWAの授業に反映される機会がなかったとしても、それは決して無駄な行為にはなることない。
世界中のARTCやソフト開発者たち、そしてApple社とインターネットで結ばれているこのミーティングは、多くの人が目にすることができる。ここでは採用されないアイデアも、世界のどこかの学校には必要なことかもしれない。
だから生徒にとっても教師にとっても、会議はただの会議ではない。世界へ向けた自身のアピールの場にもなり得る。こんなワクワクすることはないだろう。君の発言の一つ一つが世界を巡るのだ!
子供たちによる電子書籍制作
幼稚園の教室にもApple製のコンピューターとiPadが置かれ、子供たちは自然に慣れ親しむ。小学生になる頃には、自分一人で電子絵本を制作できるようになり、それらをiBookstoreで世界へ向けて出版。多くのベストセラーも生み出した。
また、ジャカルタのDeaf SchoolやBlind Schoolの生徒たちと共同で電子書籍作りも進めている。それらはインドネシア語・英語・手話の三言語に対応。
利害関係者全てが対等に関わり、子供たちが主体となる教育が世界に広がりつつある。