IT/テック

エコの大波は高級車にも押し寄せる!欧州委員会の下した決断とは

持続可能な社会の実現に向けた取り組みは様々な分野で行われているが、取り分け自動車産業において低炭素化が加速している。これは販売台数の多い小型車にかぎらず、高級車も逃れることはできない。

いわゆるハイクラス・ブランドを多く抱える欧州でもこの流れは顕著だ。なぜなら、欧州委員会では2020年までの目標値を、新車1台あたりの平均値でCO2排出量95g/kmに設定しているからだ。

ポルシェ918 Spyder

EUが2009年に算出したデータによれば、道路交通網から発生する温室効果ガスは全体の20%を占め、この数値はエネルギー生産に次ぐ2番目のボリュームゾーンだという。その20%の中でも12%を占めるのが乗用車。トラックやバスなども段階的に規制するのだが、まずは乗用車から規制していくことを決定した。

2009年4月、欧州委員会は議会をへて新しい排出性能基準を定め同年6月に施行した。その内容は「2012年から2015年の間に新車1台あたりの平均CO2排出量を130g/km以下にしなければならない」というもの。厳密にいえば若干の猶予、軽減処置、奨励策はあるものの、2019年には1g超過につき95ユーロのペナルティが自動車メーカーに課せられる。

Bentley Hybrid Concept Front

救世主はプラグイン・ハイブリッド車

ハイクラスのみならず、いま自動車メーカーは生死を分ける戦いに挑んでいる。しかし、打開策がないわけではない。一筋の光明となるのが「プラグイン・ハイブリッド車」だ。定められたCO2排出量は、あくまで1台あたりの平均値。基準値以下であれば余剰分をクレジットでき、またグループ内で相殺できる仕組みだ。

さらに、「プラグイン・ハイブリッド車」が有利なのはEVモード(電気だけで走る)があること。欧州の燃費測定法である「ECE R101」では、モーターだけで走れる距離が長いほど有利に働く。つまり、ラインナップに「プラグイン・ハイブリッド車」を加えることで基準値を満たすことが可能となるのである。

理想的には100%EVということになるのだが、インフラや航続距離など課題も多いのが現実。また、燃料電池車や水素自動車も同様の問題を抱える。先端技術ゆえのコスト増も転化できないのが実情だ。「プラグイン・ハイブリッド車」の開発もそう容易ではない。

このような状況下、ポルシェは『918スパイダー』という超弩級のスポーツカーを発売する。ベントレーは今年の北京で『ミュルザンヌ』ベースのコンセプトカーを発表した。いずれも「プラグイン・ハイブリッド車」である。

今回はハイクラスカーを取り巻く環境とその背景に終始したが、次回はメーカー各社の取り組みと、現行モデルにちりばめられたエコ技術について報告したい。