2019年までに大阪にカジノが登場する可能性がある──。
そう語ったのは米カジノ運営大手のMGMリゾーツ・インターナショナルのシニア・ヴァイス・プレジデントであるエド・バウワーズ氏だ。 2019年を目指しているのは、東京オリンピックに間に合わせたいためだろう。
カジノについては東京も候補地とされていたが、後述するように東京は有力な候補では無くなりつつある。
一方、大阪については既にMGMリゾーツ・インターナショナルが、IR(統合型リゾート)の運営についてかなり具体的な構想を持っており、5000室完備の大型ホテルを2つ建て、2万席のエンターテインメント・アリーナを建てるプランまで練っているという。
これに対して大阪市も、IRの建設予定地を「夢洲(ゆめしま)」にする方針を明らかにして応えている。
後は法の整備だ。日本では既に通常国会にIR推進法案が提出されており、この法案が通ればカジノが合法化されることになる。 ただ、カジノを実際に解禁するためには前述の法案の他、実施法案を成立させる必要があるため、そう簡単ではない。
■前向きな大阪府と投資意欲満々のカジノ事業者
しかし米不動産開発・カジノ事業者であるラッシュ・ストリート・ゲーミングのニール・ブルーム会長などは、かなり先走っている。しかも既に照準を大阪に絞り込んでいる。
同会長は、夢洲でのインフラ開発に50億ドルくらいは投資する準備が出来ていると語っている。彼の見込みでは年間30億ドルから50億ドル以上の売り上げが見込めると踏んでいるからだ。 これにも応えるかのように、大阪市は夢洲へのアクセスをよくするための鉄道網整備計画を策定中だ。
■シンガポールに続け
大阪市がIR誘致の候補地とした夢洲は、これから開発するにはうってつけだ。周辺には遊休地が多く、カジノの影響を嫌う住宅や教育施設もない。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にも近いため、相乗効果も期待出来る。 関西の経済界がIRに期待しているのは、2010年にIRを2箇所開業したシンガポールの成功例を見ているからだ。彼の地では2013年には人口の3倍近い外国人が訪れたという。 だから関西の経済界も、IRが観光ビジネスの起爆剤になると期待しているのだ。
■失速する東京
このように大阪市がIR誘致で一際盛り上がっているのには、ライバルである東京が失速し始めたことも要因としてあるようだ。
4月9日、東京都は臨海部の「青海K区画」を10年間賃借する暫定事業者の公募開始を発表した。この公募条件に展示・文化施設であることが盛り込まれた。 つまり、カジノ開業は無理になったということだ。
また、カジノ推進派だった猪瀬直樹前都知事に対し、後任の舛添要一都知事はカジノ慎重派で、社会的な悪影響を懸念している。 そのような事情もあり、海外勢は大阪市に的を絞り始めたのだ。
■大阪はカジノで浮上するか
夢洲の利点は土地価格にもある。東京の有明に比べて約4分の1程度なのだ。そのため、参入する事業者にとっては、投資の回収が早くなる。
関西経済同友会はIRに関西の食や伝統文化、あるいは地元の先端技術に接する機会が増えるような施設を併設することも検討している。 また、政治団体「経済人・維新の会」は、IR誘致によって関西の経済効果は1兆円以上であると試算した。
果たして大阪は、カジノで浮上するか。