一昔前、誰もが一度はブラウン管で目にしたことがあるであろう、フィンランド生まれのキャラクター「ムーミン」。
今年は、ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンの生誕100周年にあたるアニーバーサリーイヤーだ。それに伴い、日本公式ウェブサイト「All Things MOOMIN」がリニューアルオープンしたり、様々なメディアでも取り上げられたりと、空前のムーミンブームが巻き起こっている。
世界中で愛されるムーミンだが、「Moomin Characters」でマネージング・ディレクターを務めるRoleff Kråkström氏によると、なんと日本は母国フィンランドに次いで2番目にムーミンファンが多い国らしい。
一体なぜこれほどまでに日本人はムーミンが好きなのか。
その理由はいくつか考えられるが、なんといっても特筆すべきは、その奥深い“世界観”だろう。
ムーミン谷を舞台とした何気ないストーリーのなかに散りばめられた哲学的な言葉たちは、私たちの心の中心にゆっくりと届き、慰めや癒し、時には新たな価値観を与えてくれる。その純文学にも似た世界観が、我々日本人の琴線に触れやすいのだろう。
もうひとつ、ムーミンの魅力として忘れてはいけないのが、アート作品としての完成度の高さだ。
画家であるヤンソン氏が描くムーミンの世界は、アニメやキャラクターという枠を超え、洗練されたアートとしても評価を得ており、イッタラやマリメッコなどの有名北欧ブランドとのコラボレーションも果たしている。
アニメーションの未来
独特な世界観と北欧スタイルのアーティスティックな作風で、家具やテキスタイルなどのデザインの一部としても愛されるムーミン。
世界で注目されるようになった現代の日本のアニメーションの中でも、ムーミンの立ち位置に代わる作品は未だ登場しない。
キャラクターとしてではなく、デザインとして人間の生活に馴染み、“人とともに暮らすアニメーション”が日本の優れたアニメから誕生すれば、これまでの日本のアニメシーンにはない、まったく新しいアニメムーブメントが巻き起こるのかもしれない。