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オーストリア出身の芸術家が作品に込めるのは平和への強い想い

一見するとジブリ作品のワンシーンかと思ってしまう、天空にそびえ立つ塔。

フンデルトヴァッサー

これは、宮崎駿氏も愛してやまないオーストリア出身の芸術家兼建築家、フリーデンスライヒ・レーゲンターク・ドゥンケルブント・フンデルトヴァッサーが手掛けた実在する建築物である。

曲線で構成された歪みのあるシルエットと、豊富なカラーパレットで配色された極彩色が特徴的な彼の建築デザインは、直線的なモダン建築とも、形や作法を重んじる様式建築とも一線を画す。

フンデルトヴァッサー2

その独創的な建築デザインは、“天才の遊び心”によるものではなく、彼自身が持つ幼少期の辛い経験から形成された“確固たる哲学”により育まれている。

幼い頃、森で花を摘んで押し花にするのが好きだった少年フンデルトヴァッサーは、美しい花の色をそのまま表現したいと思い、絵を描き始めた。

しかし、10歳になると、第二次世界大戦の中で母国オーストリアはナチス・ドイツの支配下となり、ユダヤ系の母を持つ一家はユダヤ人街へ追いやられ、地下室での暮らしを余儀なくされる。

彩りを失った暗い部屋の中、息を殺す日々に耐えた彼は、戦後の建設ラッシュに沸く街並みを見て唖然とする。

新しい建物の全てが直線的で灰色。それはまさにあの地下室と同じ景色だった。

そのときの想いがきっかけとなり、彼の独創的な創作活動が始まったのである。

フンデルトヴァッサー4

 平和を祈る建築デザイン

彼が戦後の建築に感じた嫌悪感は、単にデザインに対してのものではなく、人間活動に対するアンチテーゼとして活動の原動力となっていった。

自然界に存在しない「直線」というもので構成され、色を排除した無機質な建物を、自らの手で作っては破壊を繰り返す人間の愚かさに疑問符を投げかける、フンデルトヴァッサーの頼りない「曲線」と溢れかえる色彩。

彼の建築デザインを見て、心の耳を澄まして欲しい。

彼が祈り続けたメッセージが聞こえてくるはずだ。

フンデルトヴァッサー3

*参照:あの宮崎駿監督もファン!フンデルトヴァッサーの作品が素敵すぎる | Atokore Magazine