カフェ文化は日本でも日常的になっている。
古い話で恐縮だが、喫茶店という呼び方が普通だったころは、まだコーヒーを飲むことが、ちょっと特別なことだった。 しかしドトールやスターバックスなど、セルフ方式のカフェが普及するにつれて、外出時のコーヒーは日常的になり、最近ではファストフード店やコンビニでも気軽にコーヒーが楽しめるようになってきた。
次にやってくるのはどんな形だろうか。今注目されているのは、自転車で移動するタイプの「Wheely’s cafe」だ。
この「Wheely’s cafe」であれば、人々が行き交う通りや、人々が憩う公園など、コーヒーの需要があるところであればどこにでも簡単に店を移動できる。 しかもそのコーヒーが、太陽エネルギーで淹れた一杯だと知ったならば、なおさら心地よいだろう。
そんなエコフレンドリーな移動式カフェがスウェーデンのNSID(Nordic Society For Invention and Discovery)という、IKEAやH&Mの製品開発にも関わったことがあるラボで提案され、世界中の小さな起業家を支援するとしている。
「Wheely’s cafe」はフランチャイズ・チェーン方式を採用している。その理由をNSIDの共同創始者であるPer Cromwell氏は、小さな自営型カフェが好きなんだけれどブランド力は必要だから、と語っている。
つまり、何処の誰とも分からない人物が、通りや公園で自転車に乗せたカフェを開いていても警戒されるかもしれないが、世界的に有名なチェーン店であれば、人々は安心して利用してくれるだろう、ということだ。
■手軽な開業資金とブランド
当然、大がかりな店舗を構えるわけではないので、「Wheely’s cafe」の開業の資金的な敷居は低い。
有名なカフェチェーン店を開業しようとすれば、数千万円からの資金が必要となる。しかし「Wheely’s cafe」であれば、僅か3,000ドル(約30万円)あれば良いのだ。 つまりNSIDが目指しているのは、世界一小さなカフェでありながら世界的なフランチャイズのブランドにするということだ。
■クラウドファンディングで資金調達
もう一つ「Wheely’s cafe」で特徴的なのは、このビジネスを立ち上げるに当たって必要な資金を、「Indiegogo」というクラウドファンディングで調達したと言うことだ。 その結果、目標としていた約20,000ドルをあっという間に超えてしまった。
このビジネスモデルの注目度が高く、好感を持たれていることが分かる。 そして「Wheely’s cafe」のフランチャイズ目標は、1年間で世界の100以上の都市に普及させることだという。近日中に日本にも登場するかもしれない。
■エコフレンドリーなカフェの可能性
世界のコーヒー需要はまだまだ伸びそうだが、やはり固定の店舗を構えるというのは、ハードルが高い。一度開店したら容易に移動できないし、資金もかかる。
しかし「Wheely’s cafe」の様な移動式であれば、需要に合わせて店を移動できるし、初期投資も断然少ない。
さらに注目すべきは、他の移動式店舗と異なり、排気ガスを出さず、エネルギー源も太陽であることでクリーンなことだ。コーヒーを飲む側としても、なにやら澄んだ空気に貢献したような心地良さがあるかもしれない。
もちろん、コーヒー一杯を淹れるに使ったエネルギーなど、世界規模のエネルギー消費からすれば余りにささやかだが、「Wheely’s cafe」が世界中で有名なブランドとなっていれば、その心地よさは世界中の人々とシェアしているという、これまでに無い共感も得られるかもしれない。
だから「Wheely’s cafe」は、投資する側にも消費する側にも、次世代の「貢献感」を社会にもたらすのではないだろうか。