WHILL Type-Aと利用者
IT/テック

車椅子に「イノベーション」国内大手企業の脱藩者たちが築く未来

彼らが示してくれるまで、確かに車椅子がこの数十年間、ほとんど進化していないことに気付かなかった。

彼らとは、トヨタ自動車や日産自動車、ソニー、オリンパス、リコーなどを飛び出して集まった若者達だ。

彼らは車椅子にイノベーションを起こすべく、「WHILL」を立ち上げた。9月にはこの斬新な車椅子「Type-A」を50台の限定生産として9月に出荷するために動いているが、既に70台上の注文が来ている。

その注目すべき車椅子のイノベーションとはどのようなものだろうか。

WHILL Type-Aと利用者

斬新的なデザインと革新的な機能

「WHILL」が開発した「Type-A」は、従来の車椅子とはずいぶんと印象が異なる。冷たい金属パイプは見えず、まるで新型の家電製品のような使い心地の良さを期待させる。

WHILL Type-A_製品のみ

電動で動き、操作も手先を軽く動かすだけで良いから、使いやすさも従来の車椅子に比べて断然に良くなっているにちがいない。

速度はかなり出せるらしいが、例えば日本国内の場合は道路交通法の制限があるので時速6kmまでとなる。実際、車椅子があまり高速で動いては危険でもあろう。

また、前輪の形状が特徴的なのは、24個の小さなタイヤがリング状に繋がって一つの車輪になっているためだ。この構造に加えて4輪駆動にしていることで、非常に小さく左右に回転する事ができる。

最先端のスペック

もうすこしスペックの一部を見て見よう。

まず、走行距離だが、5時間の充電を1回すれば、20km走行可能だ。日常的にはかなり余力があると言えるだろう。

そして既に書いた通り、特徴的な前輪の構造の性能として、狭い室内での小回りが効き、砂や雪道といった悪路でも動ける。段差も最高で7.5cmを乗り越えられる。

前輪の特徴

また、雪道でも走行可能と書いたが、これは前輪の構造だけでなく、「Type-A」が4輪駆動であるためだ。したがって、例えば芝生の上に乗り上げたとしても安心して移動できる。

操作も簡単で、コントローラーは直感で操作できるように工夫されている。そう、パソコンのマウスのように。

コントローラー

ハンドルは利用者の利き腕に合わせて左右で反転させることができる。また、利用者の手の状況に合わせてジョイスティック型も用意されているという気配りがなされている。

座ったままシートがスライドするので、テーブルなどを利用する際、距離の微調整が楽にできる。

スライドするシート

さらに、この「Type-A」は、Bluetoothに対応しているので、スマートフォンから各種設定ができるようにもなっている。

スマホで設定

挑戦者たちが投資される

WHILLは有名なメーカーを飛び出して集まった若者達が立ち上げた。そして次世代の車椅子を開発したのだ。

彼らは試作品を2011年の東京モーターショーに出展してみた。すると米国から多くの問い合わせを受けたのだという。

そこで彼らはシリコンバレーなどを回り、試作品を公園で走らせたり、利用者の声を集めたのだという。

その成果は、2013年に米国の有名なベンチャーキャピタルである500 Startupsからの出資を受けることとなって現れた。当然これに影響されて後に続く投資家たちが出資を申し出た。

日本でも伊藤忠テクノロジーベンチャーズが株主に加わり、今後、産業革新機構や日本のヤフーも出資する予定があるという。

車椅子にイノベーションを

WHILLは現在、研究開発は東京のオフィスで、マーケティングと販売は米国に拠点を置いている。

これは電動車椅子の需要が米国の方が大きいからだというだけではない。彼らは携帯電話がガラパゴス化したことを教訓に、次世代車椅子を初めから世界で通用する製品に育てたいのだ。

そして、電話があれよあれよという間にスマートフォンにまで進化したように、車椅子にイノベーションを起こそうとしている。

*画像出典:MEDIA KIT | WHILL